日本で進化した「紙パック」、真価試される新たな舞台
牛乳や清涼飲料向けの紙パックメーカーは国内人口の減少や市場飽和もあって、グローバル展開を志向する。王子ホールディングス(HD)は石塚硝子との国内事業が3年目を迎え、東南アジアでの生産を検討している。
有力なのがベトナムで、複数ある王子傘下の段ボール工場は進出に有利に働きそうだ。投資額は数十億円とみられ、年産1万トンを目指す。そもそも共同出資の石塚王子ペーパーパッケージング(兵庫県福崎町)の設立時に「需要増が期待される海外での事業拡大」を視野に入れていた。
ベトナムやインドネシアなどはアセプティック(常温)飲料が先行し、石塚王子が扱うチルド(冷蔵)容器の需要は今後見込まれる。当面は輸出。いずれは日本から原紙を供給し、現地で畳んだ状態のパックに仕上げたいという。日本勢初の現地生産を狙うが「チルドの物流網整備からかかわる覚悟なのか」と、競合は興味津々だ。
日本製紙はオセアニア地域に照準を合わせ、液体用紙パック事業を展開中だ。段ボール原紙・製品を強化している豪州に今夏、紙パック輸入販売の現地法人を設立した。将来の現地生産も検討する。
豪州では、チルド容器「ピュアパック」を擁するノルウェーのエロパック、充填機を手がける四国化工機(徳島県北島町)との3者連携が武器。ストローレスの先駆けの自社商品「スクールポップ」の横展開もにらむ。オセアニアの液体紙容器市場は年約30億本とみられ、5年後にシェア10%の獲得を目指す。
紙メーカーは洋紙需要の先細りからパッケージ部門の収益力向上が大命題だ。脱プラスチックの機運の高まりで世界的には大きく伸長するという見方で共通する。ただ「資源争奪戦」と言われる中、原紙やその他資材を安定・安価に調達できるか、容器に内容物を入れる充填機やそのメンテナンス・サービス体制と連携できるかが成長のカギを握る。
顧客との共同歩調も欠かせない。牛乳・乳製品業界は輸出拡大を目指している。日本乳業協会、全国発酵乳乳酸菌飲料協会、日本乳容器・機器協会は連名で、政府に「乳等の容器包装等の規制緩和」を要望。高バリアー性の包材なら新鮮な国産品を長期保存できるとし、関係省令改正を働きかけている。
国内の酪農家らはコロナ禍の需要低迷に直面している。ある紙容器メーカーのトップは「我々も国民の基礎食品インフラを支えている」と胸を張る。最初は輸入されて日本で進化した紙パックは今、新たな舞台で真価が試されようとしている。