外部資源求む、三菱ふそうが専門組織でスタートアップ連携推進
三菱ふそうトラック・バスは、有望な技術や製品を持つ国内外のスタートアップや大学の発掘、連携に力を入れている。2021年10月にオープンイノベーションを推進する専門組織を設立。ピッチイベントの開催などを通じて既に約400社をリストアップした。背景にあるのはCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)や脱炭素化をはじめとする事業環境の変化、社会的要請への対応だ。外部資源を取り込み、新たなソリューション開発を急ぐ。(石川雅基)
「接合技術の開発・実用化に600万ユーロ(約8億円)出資してほしい」。11月末に都内で開いたピッチイベントに登壇した独ナノ・ワイヤードのオラフ・バーレム最高経営責任者(CEO)は、三菱ふそうの担当者にこう訴えかけた。
ナノ・ワイヤードは、さまざまな基板上に直径1マイクロメートル(マイクロは100万分の1)以下の微細な金属ワイヤを成長させる技術を持つスタートアップ。微細金属ワイヤはハンダなどの接合技術と比較して低温、短時間で高密度な接合ができ、高い熱伝導性と接合強度を有する。半導体実装技術に応用することで電子デバイスの小型化にもつながるため「EVに生かせる」(バーレムCEO)と強調。今後、国内大手自動車メーカーにも提案する考えだ。
同日のイベントにはエネルギー関連技術や新素材の開発を目指す独企業5社が登壇。自社の独自技術を売り込んだ。三菱ふそうは「内容を持ち帰って検討していく」と話す。
三菱ふそうが設立したオープンイノベーション推進組織「FUSOグリーンラボ」は連携先の企業に実験施設や知見を提供するだけでなく、資金面でも支援する。国内自動車メーカーが専門組織を設けてスタートアップとの連携を推進するのは珍しいという。
1年間の活動を通じ、約30社と具体的な協業を検討。その結果、工場自動化(FA)や人工知能(AI)など5件のテーマで実証実験を実施し、実際の事業活動で活用できるか実現性、効果を検証している。来年からは「ハッカソン(技術開発コンテスト)やスタートアップ支援団体との連携にも力を入れ、活動の幅を広げる」(三菱ふそう)方針だ。