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開業近づく北大阪急行電鉄の延伸、トンネル工事の現場

開業近づく北大阪急行電鉄の延伸、トンネル工事の現場

延伸工事では線路を敷設する軌道工事も終盤を迎えている

北大阪急行電鉄(大阪府豊中市、内芝伸一社長)は2023年度末開業予定の南北線千里中央駅(大阪府豊中市)から箕面萱野駅(同箕面市)への約2・5キロメートルの延伸工事を順調に進めている。工事費は811億円。地下トンネルと高架橋の区間で構成、千里中央駅付近では民間の土地の地下を掘り進めるため地盤の変位などを計測して慎重に作業しながらトンネルを貫通させた。線路敷設の軌道工事も開業区間の約9割を終え、一部区間では電気工事に入っている。(大阪・市川哲寛)

大阪のベッドタウンの箕面市は阪急箕面線と大阪モノレール彩都線がそれぞれ東部と西部で南北に走っているが中央部は鉄道がなかった。鉄道の利便性を高めるため北大阪急行が延伸し、直通する大阪メトロ御堂筋線と合わせ大阪市の中心部へのアクセスが高まる。

北大阪急行は前回大阪で万博が開かれた1970年に営業を始めた。再び大阪で万博が開かれる2025年の直前に延伸するが、70年の開業時に将来の延伸を見越して千里中央駅の先を約75メートルトンネルを掘ってあった。今回の延伸は万博が直接絡むわけではないが、インパクトを与える時期だ。「新旧トンネル接続部の間にシールドマシンが埋まってマシン形状の部分があり(境が分かりやすく)時代を感じる」(秦健太郎延伸事業部調査役)と説明する。

トンネル工事のうちシールドマシンを使った区間では、千里中央駅とは反対側から50年以上前の古いトンネルを目指して掘り進めた。鉄道の地下トンネルは道路の下を掘ることが多く、民間の建物などの下の工事はあまりない。きめ細かくモニタリングして掘削速度を調整、地盤はほぼ変位なく掘削した。

工事を担当した熊谷組の田中敬二北大阪急行線延伸シールド作業所長は「掘削工事はやり直しできないので高精度に進める必要があった」と強調する。鉄道トンネルは道路や下水道のトンネルに比べて工事条件が厳しく、高精度に掘削しないと鉄道の安全走行が保証できない。図面に基づく測量から高精度に行い、地盤変位などのモニタリングデータを迅速にフィードバックするなど安全、着実な進行に注力した。

またシールドマシンで掘った土をダンプカーで運びやすくするため薬品で固める処理を行う装置は設置スペースの都合で工事途中の移動後に防音対策が難しくなった。移動前は昼間も夜間も工事していたが、移動後は周辺住民などに配慮して昼間のみの工事とするなどの制約があった。

駅は終点となる箕面萱野駅に加え、途中駅で箕面船場阪大前駅が開業する。地上駅の箕面萱野は光を通す天井膜を採用し、地下駅の箕面船場阪大前は繊維の卸問屋団地が近いため繊維の天井膜を用いるなど、各駅の立地環境を生かした特徴を出そうとしている。

軌道工事は23年夏に終了してレールがつながる予定。作業車両で電気工事を行った後、23年度下半期に試運転を始める。車両費は63億円。箕面市は生活環境がよい。開業後は「沿線地域が広がって多くの利用客が見込める」(秦調査役)と期待する。

日刊工業新聞 2022年12月07日

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