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「事業の取捨選択の時期」、リコーが重視する財務指標

社内カンパニー制に手応え

急速に進むペーパーレス化を背景に複合機からデジタルサービスの会社へかじを切るリコーは、2021年4月に社内カンパニー制を導入し、投下資本利益率(ROIC)を重視する。ROICに基づく収益性や投資効率性に加え、市場におけるポジション、デジタルサービスに合うかどうかの3視点から事業ポートフォリオを評価する。コーポレート執行役員の川口俊最高財務責任者(CFO)は「事業の取捨選択の時期に来た」と語る。

リコーは、25年度にROIC8%超の達成を目標に掲げる。約30の事業があり、そのうち複数事業については売却や撤退に向けて動く。カンパニー制の導入から約1年半たち、各カンパニー長に権限を持たせることで「意思決定のスピードが速くなった」(川口氏)と手応えを見せる。ROICはあくまでも効率性の指標に据え、最重視するのは株主資本利益率(ROE)だ。25年度に10%超の達成を目指す。 

ROE達成に向けてROICを各ビジネス単位の重点施策と、重要業績評価指標(KPI)に分けて連動させる二層構造で管理する。この管理手法を本格導入したのが22年度だ。単に数字を追いかけるだけではなく、「何ができていないかを明らかにした上で、効率を追求し、成果を上げる施策を実行する」(川口氏)。

自社株買いについては、ROE向上のためではなく、25年度に掲げる純資産約1兆円の最適資本構成の実現や、総還元性向50%という株主還元方針を基本とする姿勢。ただ直近の22年5月以降に実施した300億円の自社株買いは、足元の円安進行による為替調整を鑑みた。

また資金調達にはサステナビリティー(持続可能性)に沿った手法を活用。目標達成に応じて金利などが優遇されるサステナビリティ・リンク・ローン(SLL)や環境問題への取り組みが評価・実行される融資を用いることは「良いプレッシャーになる」(川口氏)。

日刊工業新聞 2022年10月27日

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