食品容器向けに販売、リコーの技術力生かした植物由来の新素材の実力
リコーが培ってきた技術力を基に新規事業の創出を目指す「リコーフューチャーズ」の一環で、植物由来の新素材「PLAiR(プレアー)」の用途展開を進めている。1月に緩衝用途としてのテスト販売を開始し、2023年3月にはトレーやふたといった食品容器向けに販売を始める。リコーはペーパーレス化の潮流などを踏まえて複合機中心の事業構造の変革に取り組んでおり、プレアーは一つの試金石でもある。(高島里沙)
プレアーは、トウモロコシやサトウキビなどに含まれるでんぷんを原料としたポリ乳酸(PLA)を独自技術で発泡させたシート。最大の特徴は生分解性を持ち、生ゴミと一緒に処理できる利便性だ。生ゴミは土の中で60―80度Cに達すると発酵して分解される。プレアーも同様に、土中に存在する微生物の働きなど一定条件のもとで分解が進むため、廃棄物による環境汚染の抑制につながると考えられている。
また、プレアーにはリコーが複合機事業で培ったトナーのフィラー(充填剤)技術が転用されている。
トナーの製造工程では、高画質や環境安定性といった品質制御に関わるフィラー技術が使われる。樹脂に二酸化炭素(CO2)を用いてフィラーを均一に分散させ、そのフィラーを核として微細に発泡させることで、数十マイクロメートル(マイクロは100万分の1)単位の均一な気泡を作る。微細な気泡が均一に分布するため、薄くしても破れにくい。発泡倍率を変えることで0・5ミリ―3ミリメートルまでシートの厚みを変えられる。
リコーはまず、21年6月に発売した再生複合機の緩衝材の一部にプレアーを使用。22年1月には緩衝用途向けにテスト販売を始めた。23年3月の食品容器の販売に向けては冷凍食品や飲料など食品メーカーとの協業を見込み、目下開発中だ。食品専用の設備の導入などを進め、12月には試作を始める。ストローをプラスチック製から紙製へ変更するといった動きを示す企業も多い中、プレアー製の食品容器への置き換え需要を見込む。
機能面では、最大で150度Cの耐熱性を持ち、電子レンジにも対応できる。耐寒性もあるため冷凍食品にも使え、断熱性も高い。
ただ、採用促進にはコスト面が課題だ。リコーフューチャーズBU(ビジネスユニット)プレアー事業センターの山口秀幸所長は「(プレアーは)既存プラスチックと比べて2―3倍は高い」と語る。原材料の高騰や為替の円安進行による影響もある。山口所長は「2倍以下を目指す」考え。世界にはプラスチック容器の回収体制が整っていない地域もあることも踏まえ「まずは普及させることでコストを下げ、将来的には発展途上国での採用も目指したい」と展望する。
リコーはプレアーなどの新事業を含む「その他」セグメントの22年度売上高を前年度比16・9%増の415億円と予想する一方、営業損益は111億円の赤字(前年度は155億円の赤字)と見込んでおり、収益化は道半ばだ。プレアーを軌道に乗せ、他の新規事業にも弾みをつけられるかが試される。