“スマートビル”でロボット生かす、東急コミュニティーの大命題
東急コミュニティー(東京都世田谷区、木村昌平社長)は、管理会社として「東京ポートシティ竹芝」(同港区)で清掃・警備ロボット4機種約20台を運用している。速川智行取締役専務執行役員は「人手不足への対応と管理品質の高度化が大命題」と明言。都市部では大規模再開発などを追い風に大型オフィスや商業施設の竣工が相次ぐ中、ロボットの活用にその“解”を求める。(堀田創平)
東京ポートシティ竹芝は「最先端技術の活用」を掲げ、東急不動産と鹿島が仕上げた複合施設だ。核となるオフィスタワーにはソフトバンクが入り、全館に第5世代通信(5G)を整備。顔認証による入館やエレベーターの混雑回避など先進技術を導入した“スマートビル”は、各種ロボットが「ほぼ実運用に近いレベル」(速川取締役)の実証実験に挑む最前線でもある。
同ビルでは現在、清掃用の3機種と警備の1機種が稼働する。共用部は日中の清掃をソフトバンクロボティクス(東京都港区)の「ウィズ」とエレベーター連携が可能なサイバーダインの「CL02」が担当。ウィズは専有部の夜間清掃も手がけるほか、定期清掃はアマノの「イージーロボ」が担う。一方で立哨(りっしょう)(一定の場所に立って監視)・巡回などの警備にはシークセンス(同千代田区)の「SQ―2」を採用するなど、顔ぶれは多彩だ。
重視したのは「作業環境ごとに最適なロボットを投入すること」(速川取締役)。特に清掃ロボットでは、機種ごとに吸塵力や充電・稼働時間が異なる。広さや形だけでなく、床材の種類や家具の配置といった場所との相性も外せない要素となる。「こうした知見をまとめ、ビルオーナーやロボットメーカーに提案していくことも当社の役割の一つ」(同)と捉える。
ただ実は、現時点で清掃業務をロボットに置き換えた場合のコストメリットは大きくない。運用コストがかさむためだ。だがロボットの導入により、現場の人材確保や従来業務の負担軽減につながる可能性がある。その時間を活用できれば、速川取締役が進める「ビルオーナーやテナントの満足度向上を追求する提案型管理の拡大」にも磨きがかかる。
実際、ロボットメーカーとは定期的に最新機種の吸塵力や段差・家具を回避する性能などを検証。各ロボットを適材適所で活用する体制を整えるとともに、ロボットメーカーが市場ニーズとマッチングさせる場としても機能している。またビルオーナーとも、ロボットを導入しやすい段差や床材の素材・色調、カーペットの毛足の長さなどの検討を重ねているという。
参画するロボット革命・産業IoTイニシアティブ協議会(RRI)の枠組みも、積極的に活用する考えだ。速川取締役は「行政を含め、ロボットフレンドリーな社会を作ろうという機運は高まっている」と強調。「こうして蓄積したデータを当社のノウハウとして確立し、2、3年後には新築・既存ビル関係なく商品としてしっかり提案できるようにしたい」と意気込む。