慢性的な人手不足にあえぐ警備業界。セコムの警備ロボは救いの神となるか

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人間の警備員に代わって来訪者に応対するバーチャル警備員

目線・対話、人間らしく

セコムの本社(東京都渋谷区)で4月から、警備ロボット「バーチャル警備システム」が“常駐警備”に当たっている。大型ディスプレーに男性の3Dキャラクターが登場し、人に代わって警戒監視と受け付け業務を担う。警備業界はコロナ禍前の景気拡大局面で有効求人倍率が10倍近くに達し、労働力が慢性的に不足している。一部の警備業務をロボットに置き換え、人手不足の解消と人件費の削減を目指す。(大城麻木乃)

警備ロボットは、セコムとAGC、ディー・エヌ・エー(DeNA)、NTTドコモの4社で開発した。ディスプレーのガラスなどハードはAGC、ITシステムや人工知能(AI)はDeNA、第5世代通信(5G)はNTTドコモが担った。セコムの警備業のノウハウをつぎ込んで人間の警備員に近い動きをするのが特徴だ。

一例が目の動きだ。カメラや画像認識技術、モーションセンサーを搭載し、人が右から近づいてくると目線を右へ、左からだと左へ目線を動かす。これにより「相手に見られているという威圧感を与える」(グループ常駐事業本部の内多隆人本部長)という。実際、本社ビルで実施した実証実験のアンケートでは、「81%の人が見られている感じがすると回答した」(内多本部長)としている。

もう一つの人間に近い要素は、AIを使って対話をすることだ。警備員が多く聞かれる質問はトイレの場所や訪問先の部署名など「100フレーズに限られる」(同)ことから、これらをロボットに学習させ、返答できるようにした。返答できない複雑な質問の際には、5Gでつながっている遠隔の監視センターの警備員に切り替わり対応する。「平時はロボットが、緊急事態は人が対応して業務をすみ分ける」と内多本部長は強調する。

かつて警備業界は「危険、汚い、キツいの3K業種と言われた」(同)。これが、センサーや監視カメラなど一部業務の機械化で、最近は「危険と汚いの問題は解消されつつある」(同)。だが、夜勤や長時間の立ちっぱなしというキツい点は解消されておらず、これが労働力の確保に苦労する大きな要因になっている。今回の警備ロボットの開発ミッションは「最後のキツいという課題を解決する」(同)ことだ。

同ロボットは19年4月に1号目の試作機をリリース。その後、システムをクラウドに移行し、拡張性を持たせた。例えばコロナ禍の20年6月には、熱画像カメラと小型モニターを取り付け、来訪者に体温チェックとマスク着用を促す実証実験を実施した。「ロボットから見られているため、体温チェックを無視する人はほとんどいなかった」と内多本部長は手応えを語る。

実用段階にきており、年末までに外販を予定する。目標は、人間の警備員にかかる人件費の半分以下でサービスを提供することだ。大きな施設の場合、複数台設置すれば「よりコスト削減効果は大きい」(同)として目下、営業活動に力を注ぐ。

日刊工業新聞2021年7月1日

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