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買い物客がいる食品売り場をお掃除、ソフトバンク系のロボ導入でヨークベニマルが感じた効果

買い物客がいる食品売り場をお掃除、ソフトバンク系のロボ導入でヨークベニマルが感じた効果

客に親しんでもらえるよう、店舗ごとにロボットの顔にも工夫を凝らす(ヨークベニマル三春店、東北装美提供)

セブン&アイ・ホールディングス(HD)傘下の食品スーパー、ヨークベニマル(福島県郡山市、真船幸夫社長)が掃除ロボットの店舗導入を加速している。人手不足や人材の採用難、高齢化といった課題に対し、ロボットを含めたデジタル技術の活用で業務効率の向上を図る考え。2021年10月以降、福島県を中心に宮城、山形、茨城各県の計12店舗で掃除ロボットが稼働し、22年度内にはさらに15店舗程度に追加導入する計画だ。(藤元正)

JR郡山駅の東側に立地するヨークベニマル横塚店。買い物客のいる食品売り場を、ソフトバンクロボティクス(東京都港区)の除菌清掃ロボット「Whiz i(ウィズアイ)」がゆっくり滑るように移動していく。人が近づくとセンサーで検知して停止し、安全が確認されると再び動き出す。障害物の場合はぶつからないよう迂回(うかい)してルートを進む。

「導入前後で同等の清掃レベルを担保しながら、清掃にかかるコストの若干の削減にもつながっている。お客さまの関心も高く、クレームも全くない」。ヨークベニマル開発室マネジャー/メンテナンスセンター担当の佐藤進次氏は、導入効果についてこう話す。

そもそも社内で掃除ロボットの話が持ち上がったのは約3年前のこと。ただ以前の機種は要求性能を満たさなかったことから採用を断念。性能が大幅に向上したウィズアイの登場を受け、21年2月の本社移転に合わせてオフィスに1号機を導入した。それに続き同年9月から、新本社にも近い横塚店での約1カ月間の試験運用を経て、店舗への本格展開に踏み切ることにした。

横塚店の掃除ロボット。開店前と営業時間中の混雑する時間帯を避けつつ、ボタンで選択されたルートを走行

ロボットの契約形態も他社とは少し異なる。ヨークベニマルが直接導入・管理するのではなく、業務を委託する清掃事業者がソフトバンクロボティクスと契約し、掃除ロボットによる役務を店舗に提供する。なぜこうしたやり方にしたかというと、「店舗の従業員はロボットでの清掃やメンテナンスまで手が回らない。従業員には本来の小売業務に専念してもらうため、福島県内で店舗清掃を受託する東北装美(福島県郡山市)と運用方法を模索することにした」(佐藤マネジャー)。

22年5月には導入拡大に向けたノウハウを横展開するため、営業エリアごとの清掃事業者を集めて横塚店での取り組みを共有。その結果、足元の稼働数は福島県で9店舗、宮城・山形・茨城の各県で1店舗ずつ。22年度下期には、営業エリア5県のうち空白だった栃木県の店舗にもロボットが入る見通しだ。

こうした取り組みについて、ソフトバンクロボティクス営業部北海道東北営業課の武田将氏は、「東北地区では掃除ロボットの台数も取り組みもヨークベニマルがトップ。他社もその動向をじっと見ている」と明かす。

実際には、ロボット稼働時の最初と最後に本体を所定の場所に移動するための人手が必要で、ヨークベニマルでは完全自動化への要望も強い。そうした進化を見据えつつ、23年度以降も導入拡大を随時進める方針だ。

日刊工業新聞 2022年09月20日

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