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高融点の金属接合手法を開発、阪大が挑む摩擦撹拌接合の技術革新

高融点の金属接合手法を開発、阪大が挑む摩擦撹拌接合の技術革新

先端形状を突起状からドーム状に変更したツール(左)と従来ツール

高融点の金属“つなぐ”

大阪大学接合科学研究所の藤井英俊教授や森貞好昭特定准教授らは、摩擦撹拌(かくはん)接合(FSW)技術の技術革新に挑戦している。このほど、鋼といった高融点の金属を接合する手法を開発した。また6月には固相接合に照準を合わせた産学連携による新会社を設立。装置の販売やコンサルティング業務を手がけていく方針で新規の技術開発のほか、これまでの成果を産業界で生かしていく狙いがある。(大阪・石宮由紀子)

FSWは、1991年に英国で考案された接合技術の一つ。円筒状のツールを回転し、発生する摩擦熱で被接合材料を軟化させながらくるくると撹拌して接合する。モノづくりの現場で主流のアーク溶接と異なり材料を溶かさないため疲労強度が高く、接合部分の温度が低くなるなどの特徴がある。その特性を生かして近年、新幹線など鉄道のアルミ車両の接合で採用されてきた。藤井教授らは長年にわたって、FSWをテーマに研究を続けている。

2022年に入り研究チームは、鋼やチタンなど高融点の金属をFSW技術で接合する新手法を開発。9月開催の溶接学会秋季全国大会で成果を発表した。回転工具(ツール)の先端形状を突起状からドーム状に変更し、傾斜をつけて素材に押し当てるのが従来法と大きく異なる点だ。ツール素材も超硬合金を使うため、コストメリットが図れるという。

従来のツールは円筒状の本体部分と、その先端にあるピン状のプローブ部で構成されている。一般的に、アルミニウムなど比較的融点の低い材料でFSWは行われるが、接合対象の材料よりも融点の高いツールを使う必要がある。このため融点1536度Cの鋼や同1668度CのチタンでFSWをする際には、高価な人工ダイヤモンド製のツールなどの使用が適している。ただツール先端のプローブは折れやすく、コスト面で課題があった。

そこでコストが抑えられる超硬合金を素材に採用。折れやすいプローブの形状を見直し、円筒の先端をドーム型で覆った。さらにバリを抑えるため、傾斜角をつけてFSWを行うことにした。傾斜角0度から試し、同9度でほぼバリが発生しないことが分かった。藤井教授は、「当初は押さえ板を使用し、発生するバリを押さえようとも考えていた」と話す。これらにより最適なツールの形状と加工法を導き出した。

藤井教授らは、技術開発だけでなく事業化にも乗り出している。6月、阪大発ベンチャーとしてSolid Phase(ソリッドフェイス、大阪府東大阪市)を設立した。企業向けに摩擦攪拌接合装置の販売や接合に関するコンサル業務を手がけていく方針だ。

藤井教授と森貞特定准教授は同社の取締役に名を連ねる。「社名は英語で“固相”を意味する」(森貞特定准教授)という。固相接合分野で産業界を開拓する意思を、内外に明確に示した格好だ。これまでの開発の実績を生かして、社会実装を積極的に進めたい―。期待を胸に、産業界との新たな関わり方を模索していく。

日刊工業新聞2022年10月3日

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