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社会人の“学び直し”、大学院「経営」の柱になるか

文部科学省は2023年度から、成長分野における大学院の社会人リカレント(学び直し)教育で支援事業を始める。デジタル革新(DX)やグリーントランスフォーメーション(GX)、先端科学技術など産業社会のニーズに対応したモデルを確立する。特に学位プログラムは大学院経営の柱にすべく、企業との産学連携型を支援する。23年度予算の概算要求で7億円を計上した。

大学院支援は2タイプだ。学位プログラム(修士、博士課程)は産学で、養成する人材像やスキルセットを明確にし、恒常的な教育実施体制の構築や修了後の企業におけるキャリアパス拡充までカバーする。量子、人工知能(AI)などの技術とスタートアップを含む新規の取り組みに期待する。1カ所年4000万円で12カ所を4年間、支援する。

もう一つは既存のリカレントプログラムで、教育内容の成長分野へのシフトと機能の高度化を後押しする。地域の課題解決の社会人向け講座に、データ分析手法を導入するといったイメージだ。受講時間にしばられないオンライン環境の構築、履修証明プログラムの単位認定化スキーム、学習歴のデジタル証明活用など想定する。1カ所1500万円で、12カ所を単年度支援する。

社会人の高度なリカレントは、教育未来創造会議をはじめ政府の方針で重要施策とされている。産学とも重要性を認識しているが、ニーズ・シーズの確認ができておらず、現状は足踏み状態となっている。

日刊工業新聞 2022年9月22日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
18歳人口減少の中、社会人教育に目を向ける大学は多い。キャリアアップに有望だと経営学修士のMBA、技術経営のMOTなどに人気が集まった20年ほど前を思い出す。学位とは別の、カルチャースクール型の生涯教育は、より一般的だ。しかし「大学院を含む大学の経営という観点で、好ましい形になっているか?」というと、多くに疑問符が付く。今、ITからDS、AIにかけての学びは企業側も真剣で、以前よりも大きく盛り上がっている。文科省事業の後押しを得て、大学で学ぶ社会人の裾野を広げるとともに、大学経営の柱になる形を構築していってほしい。

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