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社会人博士学生、在職者と退職者の比較に見るキャリア展望の大きな違い

文部科学省の科学技術・学術政策研究所(NISTEP)は大学院博士課程修了者の1年半後のアンケートで、30代などが多い社会人学生の在職者・退職者の比較を行った。在職者の今後のキャリア展望は「雇用先にこだわらないが、研究経験を生かした仕事」が31・1%、「研究以外の仕事でもよい」が19・2%、「大学や公的研究機関の研究者」は19%だった。対して退職者では、大学などの研究者を選んだのが32・8%で、こだわりが強いことが明らかになった。 

この第4次「博士人材追跡調査」は2020年11―12月に、18年度の博士課程の修了者(満期退学者を含む)を対象に行った。回答数は3894人(回答率24・9%)で、分野別の回答率など補正をした。修士修了後に進学した「ストレートドクター」、在職社会人、退職社会人、外国人学生に分類して調べた。

博士学生は約半数が社会人で、分野は医師などの保健分野が多いことが知られる。今回の対象者の年齢は、在職者の最多が30代前半で31・7%、退職者の最多が30代後半で36・7%だ。収入などの基準で学費免除されなかった在職者は82・9%、退職者は66・1%だった。

今後のキャリア展望は六つに分類した。退職者のうち大学などの研究職を選んだのは32・8%で、ストレートドクターの31・4%を上回り、在職者の19%と様子が違うことが示された。博士課程の社会人学び直しの議論では、一考が必要となりそうだ。

日刊工業新聞2022年1月27日
山本佳世子
山本佳世子 Yamamoto Kayoko 編集局科学技術部 論説委員兼編集委員
在職社会人は博士号取得後も、多様なキャリアが所属組織などで考えうるし万一、学位を活用できなかったとしてもとりあえず、収入はあるという安心感がある。対して30代の退職社会人となると、退路を断っての挑戦であり、「なんとしても博士号を取得してアカデミック(大学や公的研究機関)へ」となる。昔からしばしば見かけるキャリアチェンジのルートだが、昨今はポスト獲得競争が厳しいとあって、この意識が強すぎるのはどうだろうかと気になった。

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