電子部品メーカー大手4社が減益、明暗を分けたモノ
電子部品メーカー大手8社の業績で明暗が分かれた。2022年4―6月期連結決算は4社が当期減益となった一方、残り4社は当期増益を達成または当期黒字に転換した。増益の会社は、自動車や半導体製造装置向けの販売比率が相対的に高い。車生産の回復や半導体製造装置の活況を取り込み、パソコンや中国系スマートフォン向けの低迷を吸収した。ただ今後完成車メーカーが部品在庫を絞れば、23年3月期業績に影響が出る可能性もある。
22年4―6月期の当期利益が前年同期比で増益だったのは日本電産、TDK、京セラ。アルプスアルパインは前年同期が43億円の当期赤字だったものの、26億円の当期黒字に転換した。
「xEV(電気自動車など電動車)比率の増大で、(セラミックコンデンサーをはじめとする)受動部品などの販売が拡大した」。TDKの山西哲司代表取締役専務執行役員は増益の背景をこう説明した。日本電産の車載向け事業の売上高も前年同期比で15・9%増えた。
20年から続いてきた半導体不足の影響が和らぎ、完成車にも増産余地が生まれ始めている。欧州市場では、電子部品を多用するEVの比率が上昇。中国でも新興EVメーカーが販売を伸ばした。供給網の混乱に備えて完成車メーカーが部品在庫を積み増す動きも続いており、TDKの受動部品事業の営業利益は同36・1%伸びた。
当期減益だった4社も自動車需要は追い風となった。ただTDKなど当期増益だった社の方が、自動車回復の恩恵をより受けやすい構造になっている。
TDKは受動部品の売り上げに占める自動車向けの割合が22年3月期で40%超。約19%の村田製作所(電子部品以外も含む)や太陽誘電を上回っており、中国系スマホやパソコン向けの不振を吸収しやすかったとみられる。営業利益の増益幅は21年4―6月より縮小したものの、為替の円安影響を差し引いても増益を確保し、「想定を上回る着地」(山西専務)となった。
京セラの場合、半導体製造装置向けの活況も業績を押し上げた。半導体製造装置に使われるファインセラミックス部品の需要増加を背景に、22年4―6月期の半導体関連部品のセグメント利益は前年同期比約2・3倍の170億円だった。
ただ22年4―6月期が増益だった各社も、通期の業績予想は据え置いた。山西TDK専務は足元で電子部品の受注残を抱えており、22年7―9月期の減産や生産調整は計画していないとした上で「為替や中国の需要が不透明で、最終需要の変化が明確に見極めきれない」などと据え置きの理由を説明した。
マクロ環境と並ぶ不安要素が、完成車メーカーの在庫方針だ。自動車生産台数は回復基調だが、部品在庫の水準はコロナ前より大幅に高まっている。今後、調達量を絞るなどして在庫を調整する動きが出てくる可能性もある。半導体製造装置も23年3月期中は活況が続くとみられるが、川下の半導体はスマホやパソコンの販売鈍化の影響を受け始めており、24年3月期の装置需要も不透明感が増している。