スマホ不振で円安効果打ち消し、電子部品メーカーの好業績に陰り
コロナ禍でも大幅成長を続けてきた電子部品メーカーの業績が転機を迎えている。国内大手8社合計の2022年4―6月期の連結営業利益は前年同期比約5%減の約2600億円。20年7―9月期以来7四半期ぶりのマイナスだ。中国のロックダウン(都市封鎖)の影響で中華圏スマートフォン(スマホ)向けを中心に販売が落ち込み、円安効果を打ち消した。各社は23年3月期の業績予想を据え置いたが、需給が一段と緩んだ場合、一部企業では業績の下振れリスクが強まる見通し。
大手8社のうち村田製作所、ミネベアミツミなど4社が営業減益。残る4社も全社で増益幅が縮小した。アルプスアルパインは為替の円安影響を除くと実質赤字。TDKは営業利益446億円のうち126億円が円安の寄与分だった。
電子部品メーカーの業績は新型コロナ発生直後に一時落ち込んだが、その後の巣ごもり需要や自動車生産の急回復などで20年10―12月期にプラスに転じ、以降は増益を維持してきた。潮目が変わったのは中国・上海市でのロックダウンの影響が大きい。約2カ月と想定より長期化し、物流の混乱や中国経済の減速に拍車がかかった。
村田製作所は中華系スマホの需要回復の遅れが減益につながった。スマホの通信時に特定の周波数の電波を取り出すフィルターなどの需要が減少。工場稼働率に連動する操業度が前年同期比で90億円の損失となり利益を押し下げた。中華系スマホの販売は年明けから前年割れが続いており、新型コロナの再流行で消費者の購買意欲がさらに低下した。
村田製作所の前提為替レートは平均で1ドル=約130円と期初前提の同120円よりも円安に振れ、利益を300億円押し上げたが、吸収し切れなかった。
ミネベアミツミは上海のファンモーター工場の社員が2―3割しか出社できず、生産が遅れた。「他国の工場での代替生産もかなわず、痛手を被った」(貝沼由久会長兼社長)。同社はロックダウンの影響を営業利益段階で約80億円と試算しており、仮にロックダウンがなければ増益だったとみる。太陽誘電の福田智光取締役常務執行役員も「ロックダウンで出荷ができなかったことが一因で在庫が増えた」とする。
各社とも23年3月通期の業績見通しを据え置いたが、「原材料や需要、為替などの動向が現時点で不透明」(TDKの山西哲司専務執行役員)という側面が強い。村田製作所が中華系スマホ向けの回復時期を7―9月期から10月以降に修正するなど、需要は勢いを欠く。多くのメーカーは販売の落ち込みを円安でカバーしたい考えだが、自動車の挽回生産や原材料上昇分の価格転嫁などがどの程度進むかで、通期業績の振れ幅が変わる。
経済産業省の鉱工業指数によると、国内の電子部品業界は需要のピークを過ぎ、年明けから在庫積み上がり局面入りが鮮明。需要減退に減産が追いつかず、在庫が積み上がり始めている。新たなリスク要因が顕在化した場合、業績の下振れ圧力は一層強まる。