オムロンが掲げる「モノづくり革新」コンセプトの中身
オムロンは、最適な制御によってモノづくりを革新するためのコンセプト「i-Automation(アイオートメーション)」を掲げる。人に頼っていた手作業の自動化や、機械が人の成長を支援する「人と機械の高度協調」などが主なテーマだ。これにより人手不足といった社会課題の解決を目指す。創業者の立石一真氏が説いた「機械にできることは機械に任せ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである」を具現化すべく、単純作業をロボットに置き換える取り組みを加速する。(京都・新庄悠)
オムロンの草津工場(滋賀県草津市)は、制御機器事業で手がけるコントローラー系製品約4800品種を生産する。超多品種少量で多くの段取り替えが発生するため自動化が難しい反面、効率生産には自動化が不可欠だ。相反する課題を解決するため、同工場では2017年から人と協働するロボットを導入。自社の自律移動ロボット(AMR)から試験導入し、現在は協調(協働)ロボットも活躍する。
20年10月に本格導入した同社の協働ロボット「TMシリーズ」はメタルマスクの洗浄工程で活用している。メタルマスクは電子部品の実装工程で用いる金属板で、基板にクリーム状のハンダを印刷する際に使用。メタルマスクにあけた微細な穴がハンダで汚れるため洗浄する必要がある。
従来は作業員1人を洗浄工程に配置していた。各ラインから集めたメタルマスクを洗浄機に挿入、洗浄開始ボタンを押し、洗浄を終えたものを取り出してまた新たに挿入する作業を繰り返す。1枚当たりの洗浄時間は短く、他の作業との兼任も難しい。そのため専任者を配置しなければならなかった。
この一連の工程を協働ロボットが担っている。協働ロボットにはカメラが付いており、メタルマスク回収台に貼付した目印「TMランドマーク」を読み込んで台の位置や傾きを微修正する。台のどこにメタルマスクがあるかをセンサーで検知して取り出し、洗浄開始ボタンも押す。
協働ロボットの導入で作業員は各ラインからメタルマスクを集めて定位置にセットする作業のみとなり、1日当たり5時間の“活人化”を実現。これにより「洗浄専任作業者」「洗浄専任での残業・休日出勤対応」をゼロにし、メタルマスクのメンテナンスや検査工程など、他の作業ができるようになった。
ロボットを使って自動化したい企業が、同社の事例を見学してロボット導入に至ったケースもある。同工場生産管理部生産技術課の西林和則主査は「協調ロボを使いたいが、使い方や安全確保の仕方が分からないというお客さまは多い。当社工場で実際に見てイメージしてもらえるので、採用の一助にもなっている」と自負する。
今後は協働ロボット1台が別の作業を兼務する構想も描く。同工場の渡瀬博志製造部長は「1カ所に腰を据えず、いろんなところに出向かせたい」と、協働ロボットの“職務拡大”を思案する。