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強い稼ぐ力を持つ三井物産の懸念材料

三井物産の2022年3月期の基礎営業キャッシュフロー(CF)は、前期比1・8倍の1兆1587億円と大きく伸びた。20年5月に発表した中期経営計画の23年3月期目標の2・1倍だ。23年3月期は金属資源市況の正常化を見込んで減少を計画するが、それでも9500億円と強い稼ぐ力があることに変わりはない。

22年3月期は合計1750億円の自社株買いを実施し、年間配当は20円増配の105円で、株主還元総額は基礎営業CFの30%に当たる約3400億円だった。株主資本利益率(ROE)は18・0%になり、中計目標の10・0%を上回った。22年5―9月に1000億円の自社株買いを決めており、23年3月期の年間配当は120円以上を計画。引き続きROEで10%以上を目指す。

23年3月期に計画する基礎営業CFの中身を見ると、金属資源部門が3700億円と38・9%を占める。同部門は市況の影響を受けやすく、安定的な基礎営業CFを確保するには、景気の変動に影響を受けにくい分野に力を入れる必要がある。

それが資本参加するマレーシアのIHHヘルスケアとともに進める協業だ。同社はアジア10カ国約80病院を展開するアジア最大級の病院グループ。今後、アジア全域に病院・診療所を拡充するとともに、経営改革やデジタル変革(DX)で、治療の品質を高める。アジアでは金融や不動産事業を手がけるインドネシアのCTコープグループの転換社債を1000億円で引き受けが完了。アジアの消費者市場を開拓する。

懸念材料はロシアのプーチン大統領が、ロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン2」について、運営会社を新たに設立する同国企業に変更するように命じる大統領令に署名したことだ。同社はサハリン2の運営会社に12・5%出資している。22年3月期に株主資本が前期比1兆円増の5兆6000億円になったが、同国政府の判断によっては影響は少なくない。

日刊工業新聞2022年7月14日

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