【ディープテックを追え】半導体の後工程に照準、レーザーで微細加工を実現

#94 スペクトロニクス

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半導体の進化に合わせて、微細加工の重要性が高まっている。半導体の微細化は情報処理のスピードを早めるなどの利点がある。回路形成ではEUV(極端紫外線)露光装置を使って、線幅が10ナノ(ナノは10億分の1)メートル以下にもなる最先端半導体が実用済みだ。

さらに半導体の集積度を高めるため、回路の微細化を追求する以外の方法も開発中だ。そのキーテクノロジーになりそうなのが、レーザーだ。スペクトロニクス(大阪府吹田市)は短パルスレーザー発振器で、半導体という巨大市場に挑む。

重要度高まる「後工程」

従来、半導体製造においては回路を形成する「前工程」の重要性が高かった。一方、集積度の向上では原子の大きさという物理的な限界が迫ってきており、異なる方法の開発が進む。一つは半導体素子を縦に積み上げる「3D実装」だ。これまでよりもチップに多くの素子を詰め込み、集積度を高める方法だ。ここで重要になるのが「後工程」のパッケージング技術だ。

3D実装はチップ同士を上手く接続することが欠かせない。微細な加工が必要で、チップ同士を電気的に接続する難易度が上がる。スペクトロニクスはこの加工領域でレーザーを活用し、シェア拡大を狙う。

レーザーで微細加工

同社の強みは「短波長ピコ秒パルス」と呼ばれるレーザーだ。特徴は二つある。一つは光の波長が短い点だ。波長が短ければ、光を一点に集めることができるため微細な加工が可能になる。

もう一つがピコ秒(ピコは1兆分の1)という短い間隔でレーザー照射できる点だ。加工したい箇所にレーザーが接触する時間を抑えることができ、バリなどの熱影響を小さくできる。これにより、ナノ秒のレーザーでは扱うのが難しかった、ガラスや炭素繊維強化プラスチック(CFRP)でも微細な加工ができるようになる。

左の266ナノメートル加工の方が、右の355ナノメートル加工に比べて、断面を傷つけることなく加工できる

最も特徴的なのは、電気信号により自由なタイミングでレーザーを出射できることだ。従来は出射されたレーザーを光スイッチによって、加工に適したレーザーに制御していた。同社の場合、この制御が必要ない。これにより加工断面などの品質を高めることにつながる。このレーザーを増倍させ、出力を高める。その後、波長を変化させて加工に使う。

「グローバルニッチを狙う」

同社開発の266ナノメートルの発振器

2020年には新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と共同で266ナノメートルのレーザー発振器を開発。21年には三菱電機、大阪大学と共同でレーザー加工機を開発した。現在は266ナノメートルに加えて、加工用途に合わせて、532ナノメートル、355ナノメートルの3種類のレーザー発振器を展開する。

岡田取締役

24年ごろから発振器の量産を始め、26年には月産11台を生産できるようにする。自社内にクリーンルームも抱え、量産体制の構築を進める。加工機メーカーと協力して、半導体向けの導入を目指す。三菱電機などが強みを持つ、ビアと呼ばれる穴を開ける加工機での展開を狙う。同社はパッケージング技術から、次世代半導体の製造技術で「スタンダード」の立ち位置を目指す。調査会社マーケッツアンドマーケッツは、半導体や固体、液体などレーザー技術全体の市場が20年の117億ドルから25年に176億ドルに成長すると予測する。ニッチな分野ゆえに大企業では投資対効果が合わず、スタートアップへの期待も大きい。岡田穣治取締役創業者は「266ナノメートルのレーザーは競合でも実現できていない。グローバルニッチを狙える」と力を込める。

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