燃料費高騰で7社が赤字、電力大手・4-6月期決算の全容
電力大手10社の2022年4―6月期の連結決算は、売上高は燃料費の上昇に伴う燃料費調整額の増加や小売り販売電力量の増加で全社が大幅増収となったが、当期損益は燃料価格の高騰が直撃し7社が赤字となった。23年3月期連結業績予想は、燃料価格や卸電力取引市場価格などが不透明として、関西・東北・沖縄電力以外の7社が未定とした。今回、東京電力ホールディングス(HD)など4社が自由料金プランの値上げ方針を打ち出し、遅くとも23年4月までに全社が値上げする。
2日に決算を発表した東電HDの山口裕之副社長は「燃料費高騰が続くとさらに悪化する。徹底的な合理化を進める」とした。東電HDの4―6月期は当期赤字が前年同期の30億円から670億円に大幅に拡大した。規制料金の燃料費調整制度(燃調)は9月分で上限に達した。法人向けの高圧と特別高圧を23年4月から値上げする。ただ、この状態が続けば高い燃料で発電し小売りするという既存モデルでの成長は難しく、今後は太陽光発電など「地産地消」の発電サービス事業を強化する方針だ。
4―6月期に各利益段階で黒字を確保したのは中部電力と北海道電力、四国電力の3社。中部電は値上げ効果で営業増益だが、燃料費高騰による期ずれ差損の拡大で経常・当期減益。サハリン2から液化天然ガス(LNG)を調達できない場合、経常損益が年間で約500億円悪化する可能性を示した。北海道電は小売りと相対の他社販売が増加した。四国電は伊方原子力発電所3号機の運転再開で222億円の経常利益の押し上げ効果があった。
関電は燃料費高騰や為替の影響、電力市場からの調達費増に加え原発の利用率が前年同期比15ポイント下がった。東北・北陸・中国・沖縄の各電力は燃料費高騰などで過去最大の赤字。東北電は2月の福島沖地震で火力発電が停止した影響も出ている。九電は域外電力販売の減少に加え、発受電電力量に占める原発の割合が前年同期より25・5ポイント減った。
燃料費が上がっても、規制料金では燃調の上限までは値上げできるが、9月分ではすでに中部電以外の9社が上限に達しており値上げできない。中部電も10月には上限に達する可能性が高い。一方、深夜電力を利用したオール電化プランなど、これまで価格優位性を押し出してきた自由料金では上限撤廃や値上げが相次ぐ。
4月以降、関電や九電、北海道電、四国電、中部電が値上げを発表した。4―6月期決算に合わせて東北電が低圧の自由料金と高圧、特別高圧を、東電と北陸電、沖縄電が高圧と特別高圧の値上げの方針を発表した。中国電は従来から自由料金に燃調上限を設けていない。各社が燃調上限を超えた部分を負担し経営を圧迫している規制料金については、国の委員会であり方が検討されている。