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定年年齢を65歳に引き上げた豊田合成、感じていた課題

豊田合成は4月から全従業員の定年年齢を65歳に引き上げた。定年延長という社会的な潮流に企業内制度を合致させただけでなく、将来にわたる持続的な成長を実現するのが狙い。社員が長く安心して活躍できる職場づくりの一手として取り組む。

これまで豊田合成では60歳を定年とし、その後5年間は再雇用として働くことができた。一方で再雇用になると勤務形態は短時間になるため、賃金も下がる。人事部の梅田雅史部長は「60歳で一区切りとなるため第一線で活躍するのではなく、お手伝いの意識に変わってしまっていた」と課題を振り返る。ここに社会的な流れである65歳定年や、10年後を見据えた場合の社内の高年齢化も加わり「実施するタイミングに来た」(梅田部長)と話す。

制度設計の段階では再雇用と定年延長を併用する案もあったが、社員が能力を発揮できる職場風土づくりや会社の総合力を高めるために“一気”に65歳定年へ切り替えた。

関連して同社が強化しているのは研修だ。特に59歳の社員は定年が1年後から6年後に変更。「今と同じように一人分の仕事を100%で行ってほしい。その意識転換を図っている」(梅田部長)とブレーキではなくさらにアクセルを踏み込めるよう支援する。

「60歳から65歳の間は豊田合成という場を使い自分の力を高めていく機会になる」と続けるのは梅田部長。人生は100年時代となっており、65歳で退職しても30年以上生活しなければならない。第二の職場や地域社会で強みや専門性、得意分野を発揮するため準備の5年間でもある。

定年を延長すると若手の登用や昇格を妨げる恐れもあるが、梅田部長は「むしろ若手の突き上げにより会社は強くなる」と話す。30・40歳の社員が65歳までのキャリアプランを考える仕掛けづくりにも取り組んでいる。

日刊工業新聞2022年6月7日

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