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京大発「核融合」スタートアップが2024年に模擬発電を始める意義

京大発「核融合」スタートアップが2024年に模擬発電を始める意義

京都フュージョニアリングの模擬プラント(イメージ)

京都大学発核融合スタートアップの京都フュージョニアリング(東京都千代田区、長尾昂代表)は、2024年中に自社の核融合炉の模擬プラントで発電実証を始める。同社が開発する核融合炉の部品や機器の性能を同プラントで検証し、海外の核融合スタートアップが開発する核融合商用炉への採用を目指す。すでに模擬プラントの設計を完成しており、関東圏に建設する予定。2月に調達した約20億円に加え、23年中にも資金調達を実施し、実証施設の建設費用に充てる。

実証施設では中性子を伴う核融合反応は起こさない。このため放射性廃棄物は発生しない。実証ではマイクロ波で核融合炉を加熱する部品「ジャイロトロン」を設置し、磁場環境も再現する。模擬的に作った熱をブランケットで取り出し、熱交換器を介し発電する一連の流れを実証する。

実証開始後も設備の更新を予定する。顧客が開発する核融合炉の形状に合わせ、熱を取り出す部品であるブランケットの設計や冷却材の種類を変えることを想定する。更新費用も含め、総建設費は数十億円になる見通し。

米コモンウェルス・フュージョン・システムズやTAEテクノロジーズなど核融合商用炉を開発するスタートアップからの各種部品の受注を視野に入れる。将来は核融合スタートアップ各社が開発するプラズマ技術と、京都フュージョニアリングのプラント技術を組み合わせることも目指す。

核融合発電は太陽のエネルギー運動を再現したシステム。重水素と三重水素をプラズマ状態でぶつけ、生じた熱で発電する。二酸化炭素(CO2)を排出せず発電できることから次世代エネルギーと期待される。

日刊工業新聞2022年7月6日
小林健人
小林健人 KobayashiKento 経済部 記者
秋には量子科学技術研究開発機構の那珂研究所で世界最大の実験炉「JTー60SA」が稼働します。25年にはイーターの運転開始も予定されています。実用化には技術的ブレイクスルーが必要ですが、産業化に向けたR&Dも重要ではないでしょうか。

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