こうじ製造装置のトップメーカーが成果上げた、社員エンゲージメントの高め方
フジワラテクノアート(岡山市北区、藤原恵子社長)は、日本政策投資銀行が実施する「DBJ健康経営格付け」の最高ランクを2021年に取得した。社員に対する心と体を健康に保つための取り組みや多様な人材が活躍できる仕組みづくりが評価された。中でもエンゲージメント(愛着)に関する得点率は平均を大きく上回り高い評価を得たという。(広島総局長・大櫛茂成)
フジワラテクノアートは岡山桃太郎空港(岡山市北区)に隣接する産業団地に本社を構える。社員数は約150人。みそやしょうゆ、清酒、本格焼酎などを生産するための醸造機械を製造する。中でもこうじを自動で製造する製麹(せいきく)機は国内シェア8割を誇るトップメーカーだ。国内だけでなく米国や中国、東南アジアなどへ輸出もしている。
取り巻く環境の変化と女性や若手の社員が増えたことなどを背景に近年、経営改革を進めてきた。16年の経営理念刷新を皮切りに17年開発ビジョンの策定と人事制度の刷新、18年第3次中期経営計画策定、19年デジタル変革(DX)推進などを実施。この経営改革の一環として18年から健康経営の取り組みを開始し、20年にはエンゲージメント経営を導入した。
藤原社長が社長就任した2001年は女性社員数わずか5人。しかも男性社員をサポートするような仕事だったという。近年は女性社員が多数入社し、30人まで増えている。人事総務部や経営企画室などの事務系だけでなく、技術部やプロセス開発部、先進技術開発部といった技術系として働く女性も多い。また、部長や課長、係長などの役職に就いている女性社員も増えた。
社員の働き方については、ワークライフバランスの適正化へ1時間単位の有給休暇取得制度や育児休業制度などを導入。岡山市内の企業主導型保育所と提携し社員の子どもを預けられるようにした。
ただ、藤原加奈副社長は「制度は作るだけでなく、利用できる環境づくりが大切」と説明する。気後れすることなく休みを取りたいと言えるようにするには組織内の関係構築が大事という。会社主催の祭りも関係構築につながっている。社員の家族が沢山参加するため「どの社員には何歳くらいの子どもが何人いるということが同僚にわかる」(藤原副社長)。
また、近年注力するのが20年から始めた社員のエンゲージメント向上だ。全社員と全役員を対象に働きがいに関するアンケートを実施。分析結果は階層別、年齢別、部門別に全社員へフィードバックする。同時に課題の改善に向けた施策を検討、実施している。個人別に5カ年のビジョンを設定し、成長計画に基づき資格取得や実務経験の蓄積を進める。
社員のエンゲージメントは向上しており、入社3年以内に退社した社員は20年、21年と2年連続でゼロだった。藤原副社長は「やる気のある人を増やし、生産性向上につなげたい」と強調する。