早大総長選、再任の決め手は何だったか
早稲田大学で2022年9月からの再任が決まった田中愛治総長は、次の2期目4年間の抱負をインタビューで語った。カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)など分野融合の研究や、デジタル変革(DX)などで文系・理系インターフェースとなる人材育成を強化する。日本医科大学との連携は研究・教育で相乗効果を強める一方、「在任中の早大医学部の実現はない」とした。

研究は「情報科学・人工知能(AI)、ロボット、ナノ・エネルギーの個々は無理でも、カーボンニュートラルに向けた総合力でトップになれる」と強調。人文社会科学系の強みも生きる。教育では新型コロナウイルス感染症対応などで必要な文系、理系をつなぐ人材育成を重視。「入試の文理の壁を早稲田が率先して打ち破り」、データサイエンスや情報科学の全学教育につなげる。
これらを支える財務戦略は23年に約7億円が生まれる独自基金の運用や、新設の「早稲田大学応援基金」が柱だ。政府の国際卓越研究大学の認定を狙う。「40年には日本で、50年にはアジアで、最も学ぶ価値のある大学として社会から認められる」ことが目標だ。
日本医大とは論文引用増も期待できる医工連携を進め、早大付属高校が同大初の推薦指定校になった。しかし研究力が私立医大トップクラスで、早大より歴史のある先方の意向を踏まえて、1期目の抱負に挙げていた私立単科大学の統合は取り下げた。
日刊工業新聞2022年6月23日
