「職」「住」一体化が人気、マンションデベがあの手この手
コロナ禍で定着した多様な働き方を受け、ワークスペースを備えたマンションが人気を集めている。当初から「くつろぐこと」を最優先に設計された住まいでの業務は、環境・設備の両面で難しさが指摘されてきた。ここにきて原則としてテレワークに切り替える企業も出てくる中で、マンション各社は職住を一体化させた“解”を打ち出す。(堀田創平)
「通勤時間ゼロという新しいライフスタイルを提案する」。三菱地所レジデンスが訴求するのは、1階に24時間使えるコワーキングスペースを併設した賃貸マンションだ。その第1弾「ザ・パークハビオSOHO大手町」が15日に完成した。住まいとワークスペースが同じ空間となりがちなテレワークの課題を解消する。
コワーキングスペースは高さ最大6メートルの「2層吹き抜け」とし、約60平方メートルの広さを持たせた。家族の視線が気になる、共用部での長時間作業は疲れる、カフェでは機密資料を開けない―といった声を反映。オフィス仕様のチェアやモニターを導入したほか、動線も自宅から直接のアプローチを可能にするこだわりの仕上げとした。
三井不動産レジデンシャルなどが建設中の「パークタワー勝どきミッド/サウス」もユニークだ。「住まいの中にいかに働く環境をつくるか」とし、共用部には書籍に囲まれた空間やテラス席を用意。会議室を備えた約300平方メートルのコワーキングスペースや屋外の広いテーブルなどと合わせて、働く場所を選べる仕組みを整えた。
専有部への提案も目立つ。野村不動産は「プラウド湘南藤沢ガーデン」に間取りの自由度を高める「つながROOM」を導入した。洋室2室の間に約2畳の空間を設置。両側の引き戸を開ければ大きな空間が生まれ、閉じれば個室として利用できる。可動棚やコンセント、ダウンライトなども備え、幅広い用途で使える。
一方、三菱地所レジデンスは一部に可動式の間仕切り「自在区」を採用した分譲マンションも建設中。床や天井のレールではなく、スチール天井にマグネット式の軽量パネルを取り付けて固定する方式を取り入れた。居住空間を自由に区切ることで、テレワークやリビングの拡張といったニーズに対する柔軟な対応が可能だ。
住まいにワークスペースの設置を検討する動きは、従来は個別に間取りや設備を決定できる注文住宅が先行していた。だがテレワークが“当たり前”になった今、マンションに同等の設備を求めるニーズは着実に拡大している。共用部でも、当初はラウンジやライブラリーとして設計された空間を変更して導入する例も出ている。