住友商事が職場に現代アートを飾るワケ
住友商事は、働きながら現代アート作品が鑑賞できる取り組みを開始した。本社24階オフィス内にその環境を整えた。社員の感性に刺激を与え「イノベーションを起こすようなアイデアを生み出してもらう」(デジタルマーケティング事業部の世一麻恵氏)ことが狙い。作品は半年ごとに入れ替える計画で他のフロアへの展開も検討していく。
資本業務提携するThe Chain Museum(ザ・チェーンミュージアム、東京都渋谷区)が手がけるアート作品のサブスクリプション(定額制)レンタルサービスを活用した。同サービスによる作品設置と公開完了は住友商事が初めてだという。
今後、各事業とのシナジー(相乗効果)が見込めるアート事業に関してはグループ内連携を進める方針だ。さらに作品を発表する場所を提供することなどで若手作家の育成にもつなげる。
この取り組みで連携するザ・チェーンミュージアムの遠山正道社長は元商社マンで、企業経営とともに、創作活動も展開している。住商に展示した4作品の中には、遠山社長自身が手がけた十進法の時計もある。
この作品はテクノロジーの進化に伴い人間の計算能力が退化したことから、政府が時間を十進法に切り替えたことを想定している。
アートには作品を通して鑑賞者に思いやメッセージを投げかけているものが多い。遠山社長も手がけた時計に「失われた2時間で何を考えるのか。無駄の中に人間の喜びがあるのではないか」などとの思いを込めた。
住商では、その感想などを通して「社員どうしの新たなコミュニケーションを生み出し、新しいビジネスにつながる」(世一氏)ことを期待する。
日刊工業新聞2022年6月10日