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空に新たな輸送網「エアモビリティー」、商社が模索する事業化への道筋

空に新たな輸送網「エアモビリティー」、商社が模索する事業化への道筋

住友商事はドローンで船舶に荷物を届ける実証を行う

総合商社が飛行ロボット(ドローン)や空飛ぶクルマなどのエアモビリティーを活用したビジネス展開に向け検証を進めている。空を介した人や物の移動はさまざまな可能性を秘めており、各社が事業化の道筋を模索する。商社の知見、ネットワークを生かし、安全性の確保やインフラ整備などの課題解決を試みる。(森下晃行)

住友商事は4月からシンガポール重工大手のSTエンジニアリング、ドローン関連事業を手がける英スカイポーツと共同で、シンガポールの港湾に停泊する船舶にドローンで荷物を送る実証実験を行う。従来はボートで荷物を届けていたのを、自律飛行ドローンを利用することで人件費抑制や二酸化炭素(CO2)の排出削減といった課題解決を目指す。

通常のボートと比べ約6倍のスピードで運ぶことができる利点を生かし、「特に医薬品や現金、書類などの軽くて重要なものを迅速に運べるのでは」(航空事業開発部)と期待する。10月に実証を完了し、事業性などを検証する。将来的には他地域での展開も検討している。

三井物産は2月、宇宙航空研究開発機構(JAXA)、テラドローン(東京都渋谷区)などと共同でエアモビリティーの空域管理に関する実証を行った。ヘリとドローンは現在、それぞれが独自の運航管理システムで運用されている。実証では「大阪・関西万博の期間中に急病人が発生し、ドローンが飛んでいる空域に救助のヘリコプターが飛来する」というシナリオのもと、両システムを統合してデータを共有し、機体の位置情報などを認識できるようにした。

今回はドローンを利用したが、将来的には「ドローンを空飛ぶクルマに置き換えても事故が起こらないようなシステムの実現を目指す」(モビリティ第二本部)という。

丸紅は21年に電動垂直離着陸機(eVTOL)を開発する英社と業務提携を結んだ。双日もヘリコプターの遊覧飛行事業を手がけるベンチャーに出資するなど、さまざまな商社がエアモビリティー関連の取り組みを拡充している。

経済産業省も官民協議会を通じてロードマップを作成、法整備やルール作りを推進するなどエアモビリティーの実用化を後押ししている。高い安全性の確保やバッテリー性能の向上、法整備など課題は残るが商社がエアモビリティー事業に本格的に乗り出す日も近そうだ。

日刊工業新聞 2022年3月11日

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