データセンターを守る、IIJの珍しいロボット活用法
インターネットイニシアティブ(IIJ)は、データセンター(DC)で警備ロボットとソフトウエアロボットを組み合わせた自動化に取り組む。DCでのロボット活用はまだ珍しいという。顧客のIT機器を預かるDCでは、運用者が24時間常駐して稼働監視を行う必要がある。顧客案内や設備の異常検知といった定型業務をロボットで代替し、運用者は障害対応など人の判断を要する仕事に集中する。(苦瓜朋子)
IoT(モノのインターネット)やクラウドの普及でDC需要が高まり、国内でも大規模DCの建設が進む。一方、IT人材全体の不足感と相まって施設内でネットワークやサーバーを運用監視するエンジニアは不足気味だ。こうした中、IIJは、2019年に稼働させた「白井データセンターキャンパス(DCC)」(千葉県白井市)で自動化を進め、人手不足に対応している。
白井DCCで実験的に導入したのは、綜合警備保障(ALSOK)の警備ロボット「リボーグゼット」。主に巡回業務と来訪者の案内に活用している。
巡回業務では、侵入者や不審物の検知、ドアの施錠確認などを行う。ロボットのカメラで撮影した映像は、ソフトウエアロボットを通じて異常を検知し、運用者に通知する。単純だが時間のかかる巡回業務の一部をロボットに置き換え、従来4人で行っていた昼間の巡回を3人でまかなえるようになった。
入退館管理では、顧客が事前申請した情報と、当日提出された情報をソフトウエアロボットで照合し、自動的にICカードを発行。その後、リボーグゼットが音声やディスプレー上で情報を提供しながらサーバーラックまで案内する。顧客がICカードをかざして解錠、施錠できるため、待ち時間も短縮した。
IIJは白井DCCを無線通信技術を用いて顧客と共同実証する場としても利用。敷地内には、第5世代通信(5G)をエリア限定で利用できる「ローカル5G」や自営無線通信網「プライベートLTE」などさまざまな通信網が張り巡らされている。これらを通じて屋内外でロボットが自在に行き来したり、大容量の映像を円滑に伝送したりといったことを可能にしている。
「警備以外の用途をALSOKと共同で検討している段階だ」と山井美和常務執行役員は話す。天井に配置した目印をカメラで認識して走行する方式から、ソフトウエア制御に変更し、屋外なども円滑に走行可能になった。一方で、警備用に設計されているため走行スピードが遅く、人の歩く速度に合わないといった課題もある。
DCでのロボット運用自体は有効だと見ており、「複数台の導入や他のDCへの横展開も検討している」(久保力基盤サービス部長)。22年度中に本格導入したい考え。顧客が持ちこむ機器を運ぶための搬送ロボットや、飛行ロボット(ドローン)による上空からの巡回など活用するロボットの種類も拡大する方針だ。