マイクロプラ調査企業の軌跡から探る、社会課題解決スタートアップ成功の道筋

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水中のマイクロプラスチックを捕捉する機器

社会課題の解決を志して起業し、ビジネスとして成功するスタートアップが増えている。ピリカ(東京都渋谷区、小嶌不二夫社長)は他社にも影響を与えて社会も動かした。組織が株式会社と一般社団法人の“二刀流”なら、副業が多数を占める人材も特徴だ。ピリカの成長の軌跡からスタートアップ成功の道筋を探る。

全国農業協同組合連合会(JA全農)は1月、プラスチック殻で包んだ被膜肥料に頼らない農業を目指すと発表した。被膜肥料は水田にまくと肥料が少しずつ出ていくので、農家は何度も施肥せずに済む。便利な半面、プラスチック殻は海への流出が指摘されていた。

プラスチック廃棄物による海洋汚染が問題となっている。微細なプラスチック片(マイクロプラ)は海での回収は難しく、魚介類の体内に入って生態系を破壊する懸念がある。プラスチック殻もマイクロプラであり、JA全農が方針を発表した。

社会が被膜肥料に注目したきっかけがピリカの調査だった。2019年、河川や港湾など100地点を調査し、98地点でマイクロプラを確認。採取して分析したところプラスチック殻が多かった。

水面に浮かぶマイクロプラスチックを捕捉する機器

同じ調査で人工芝の破片も見つかった。早速、住友ゴム工業は自社の人工芝が使われた施設に流出防止策を施した。小嶌社長は「以前なら問題と認めてもらえないと思っていたが、今はチャンスと捉える企業が増えている」と語る。確かに研究機関でもない団体が問題を指摘しても、社会が反応するとは考えにくかった。

今、環境貢献を社会が評価するようになり、企業の対応が早い。小嶌社長も「初めは研究者的なアプローチでデータを示せば社会が変わると思っていた。今は企業の立場も考えるようになった」と自身の変化も語る。

小嶌社長は京都大学の大学院生だったころ、世界を放浪して廃棄物問題を知った。起業した11年、ゴミを拾った人が「拾った」と投稿すると地図上に表示されるアプリを開発。善意による清掃活動が可視化されるため、企業の参加意欲をかき立てた。111カ国で180万人が利用する。

環境スタートアップ大賞で環境大臣賞を受賞したピリカの小嶌不二夫社長

小嶌社長は一般社団法人のピリカ(以下、社団)の代表理事も務める。創業間もない株式会社のピリカ(以下、会社)は、機器を開発しても実機を製作する資金がない。そこで社団のピリカが環境団体から助成金を獲得して実機を作って調査事業を担ってきた。環境団体も非営利団体だと助成しやすい。実績を積むと会社のピリカにも調査依頼が増え、成長軌道に乗った。

また、ピリカのスタッフ50人中18人が副業やボランティア。不足する知見を外部人材に頼ってきたためだが、「大企業に所属しながら環境問題解決に携わる仕事をしたい人のやりがいになっている」(小嶌社長)と語る。副業でも社員と待遇差はなく、優秀な人材が参画している。

ピリカは社会課題解決を訴えるだけでなく、企業の立場を理解し、資金調達を工夫し、意欲的な人材を活用してきた。ESG(環境・社会・企業統治)が企業活動の基準となり、副業も珍しくなくなった。時代の変化を採り入れる柔軟さがスタートアップの武器だ。

日刊工業新聞2022年5月6日

COMMENT

松木喬
編集局第二産業部
編集委員

一般社団法人も株式会社も「ピリカ」。混乱しそうですが、あえて同じ名前にしているのは外から見ても同じと分かるようにするため(ガラス張りにして、やましいことはないと分かってもらう)。一般社団法人は国連環境計画からも支援を受け、ラオスなどアジア4カ国のプラ調査にも参入しました。また「副業で選ばれる会社」と小嶌社長が自身で言っていたのも印象的でした。

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