豪州に脱炭素エネルギー拠点、出光興産が描くビジネスの将来像
出光興産は年内に閉山する豪州の石炭鉱山跡地に、再生可能エネルギーや水素製造を行うエネルギーハブを構築する。太陽光や風力、揚水発電、蓄電池などを併設し地域の電力供給を担う。将来はグリーン電力を使った水素製造も検討、最終的には日本への輸出も視野に入れる。現地で欧米メジャーに次ぐ規模の石炭採掘を行っており、地元との長年の信頼関係をもとに、閉山後も安定的な雇用と脱炭素エネルギーを生み出す事業を行う。
現地では子会社の出光オーストラリア(宇山史剛社長)が3鉱山を運営している。閉山するのは南東部ニューサウスウェールズ州のマッセルブルック鉱山。100年以上の歴史があり地域と共生してきた鉱山で、出光が1989年に買収した。140人を雇用し年間生産量は100万―200万トン。現在は最終の表面露天掘りを行っている。
豪州では閉山する炭鉱は原状回復の義務があり、2500ヘクタールの広大な土地の生かし方を地元と検討してきた。国も州政府も再生エネの導入に積極的で公的支援も充実している。また220万キロワットの石炭火力発電所が2年以内に終了予定で「系統接続にも余裕ができる」(岡村信之出光豪州副社長)ことから、複数のプロジェクトを段階的に立ち上げる。
核となるのは現地の電力会社、AGLエナジーと共同で進める揚水発電。採掘跡を下池に利用し、丘陵地に上池を設ける。発電規模は25万キロワットで発電時間は8時間。基礎調査を終え系統接続や環境影響調査を実施中で28―29年の運転開始を目指す。「足の短いプロジェクトを先行させる」(同)と、太陽光や風力、蓄電池が先に稼働する可能性は高い。
長期では発電したグリーン電気でグリーン水素やアンモニアを製造し地産地消する。また現地から約110キロメートル離れたニューカッスル港でのグリーン水素・アンモニアプロジェクトにも参加しており「港までパイプラインができれば日本への輸出も考えられる」(宇山社長)。
出光は30年度に再生エネの総電源開発量を19年度の20万キロワットから30年度に400万キロワットと20倍に引き上げる目標を掲げている。