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ジェイテクト、統一ブランド 「JTEKT」で攻勢

事業間連携でシナジー創出

ジェイテクトは4月から事業ブランドを「JTEKT(ジェイテクト)」に統一した。自動車部品や軸受、工作機械の事業連携を加速する狙い。各事業の強みを生かして新たな付加価値や相乗効果を生み出す。コロナ禍もあり事業環境の変化が一層激しくなる中、ブランド統一を新潮流を乗り越える原動力にする。(浜松支局長・山岸渉)

「強みは多くのシーズがあること。事業間の壁を取り払って有効にシーズを使えば、より良い仕事ができる」。佐藤和弘社長はブランド統一の意義をこう強調する。

2006年に光洋精工と豊田工機が合併して誕生したジェイテクト。主に軸受が「Koyo」ブランド、工作機械で「TOYODA」ブランドを展開。各事業が独自に事業成長を目指し、グループ全体での競争力の強化は十分とは言い難かった。ブランド統一を通じてさまざまな連携を促し、シナジーの創出につなげる。

連携で期待する取り組みの一つが、21年11月に刈谷工場(愛知県刈谷市)で開設した歯車開発センター「ギヤイノベーションセンター」だ。電動化の進展を捉えて、電動駆動モジュール「eアクスル」向け歯車など新たな需要を狙う。ジェイテクトグループの加工技術などを結集し、高付加価値の歯車製品を提案する。

生産面での連携にも乗り出している。ステアリングを生産する奈良工場(奈良県橿原市)では、工作機械・システム事業が手がけるプログラマブルロジックコントローラー(PLC)を活用したスマートファクトリー化の実証実験に取り組む。IoT(モノのインターネット)技術を活用し、稼働状況などの情報をきめ細かくデータ化して生産性を高める。

リチウムイオンキャパシターでは、トヨタ自動車向けに電池生産設備を手がけているモノづくり力の強みを生かす考えだ。

ジェイテクトは企業体質の強化に向けて「リボーン」(競争力の再構築)に取り組んできた。例えば、20年12月に実施した名古屋市からトヨタグループ各社が集積する愛知県刈谷市への本社移転。「20年6月に社長に就任して4日で決めた」(佐藤社長)とスピード感を持ってさまざまな改革を進めてきた。

自動車業界は変革期にあるうえ、コロナ禍も重なり、事業環境の変化はめまぐるしい。佐藤社長は「何が起こるか分からない中で生き残るには、競争力がないといけない。ブランド統一による連携が原価低減の強化や未来への種まきにつながる」と語る。

佐藤社長の就任前は当期赤字だったジェイテクトは22年3月期予想で210億円の黒字化を見込む。企業としての競争力は高まってきている。「ジェイテクトの未来はものすごく明るい」(佐藤社長)とブランド統一で成長のギアを上げる。

日刊工業新聞2022年4月25日

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