DXは道半ば…「企業IT利活用動向調査」で分かったこと
コロナ禍が長引く中、企業のデジタル化はどこまで進展したのか―。日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)とアイ・ティ・アール(東京都新宿区)がまとめた「企業IT利活用動向調査2022」によると、コロナ禍を機に49・4%の企業がテレワークを導入し、コロナ前からの導入も含むと72・7%となった。電子契約の利用企業なども増加傾向にある一方、業務全体のデジタル変革(DX)は道半ばという状況が確認された。
調査結果からは、テレワーク導入率が7割を超えるなど、場所や時間にとらわれない勤務形態がニューノーマル(新常態)として定着したことがうかがえた。
テレワークで俎上にのぼる“脱ハンコ”の動きも進展。電子契約の利用企業が順調に増え、全体の69・7%が対応済み。現在、準備検討中を合わせると、84・3%に上った。
一方で、消費税の仕入税額控除の方式として23年10月から始まるインボイス制度への対応は、まだら模様だ。電子インボイスの利用を「すでに決定している」が34・3%、「検討中」が36・0%であるのに対し、「紙でのやりとりを考えている」や「まだ検討していない」などが約2割存在し、導入はこれからという状況が浮き彫りとなった。
また、テレワークではセキュリティーの確保も論点になる。パスワード付きZIPファイルをメールに添付して送信し、その後にパスワードを同じ経路で送る「PPAP」は、マルウエア感染のリスクが指摘されていることなどから、官公庁や大企業で廃止の動きが広がりつつある。
調査結果では、PPAPを使っていない、または禁止している企業は送信側で17・9%、受信側は14・4%となった。また、今後は32・6%の企業が受信を禁止予定だ。JIPDECは「受信禁止の動きに伴って送信時の対策の必要性が高まるため、送信禁止を予定する企業の割合は今後さらに高まる可能性がある」と分析した。
DXについては「取り組み中だが、効果はまだ不明」が最も多く40・2%を占めた。次いで「すでに取り組み、効果測定も実施」が18・1%となった。「DXに取り組んでいる企業は過半数を占め、これに準備中の企業を加えると全体の4分の3に上るが、効果を確認する段階まで至っていない企業が多い」(JIPDEC)。業種別では金融・保険業でDXに取り組んでいる企業の割合が高く、従業員規模別では規模が大きいほど同割合が高くなっている。
DX推進の課題は「体制構築が難しい(人材不足)」が最も多く、「規程の整備が難しい」「業務の洗い出しが難しい」も含め、いずれも4割以上に及んだ。デジタル化の進展でDXの取り組みは多くの産業に広がっているものの、今後は新事業の創出などの成果が問われそうだ。
調査は1月、国内企業のIT・情報セキュリティー責任者を対象に実施した。有効回答は982社。