汚泥原料の炭化材を拡販、製紙企業たちが狙う効果
製紙の2社が、製紙工程で発生する汚泥(ペーパースラッジ)が原料の炭化材を拡販する。炭化材は鉄鋼向けの製鋼用保温材が主な用途で、北越コーポレーションは安定供給に注力。中越パルプ工業は農業用にも展開し、今後は調湿材や消臭材などに用途を広げる。「需要が増えても、廃棄物が原料だけに積極的な“増産”とはいかない」(北越コーポレーション)事情もあるが、廃棄物の削減と再資源化を通じて循環型社会への寄与を訴求する。
北越コーポ、製鋼用に安定供給
北越コーポが手がける炭化材は、炭素が10―25%、カルシウムが10―30%、アルミニウムが5―20%、ケイ素が1―15%、マグネシウムが1―5%含まれているという。木質資源由来だけに基本的に不純物がなく、炎も出ない安全性から安定した需要があるという。
ペレット状をしており、関東工場市川(千葉県市川市)で年3200トン、長岡工場(新潟県長岡市)で年300トンの合計約3500トンを生産している。
炭化材の生産は約20年前に開始。汚泥の処理にあたって両工場が焼却炉でなく、炭化設備を導入したからだ。有料での引き取りもある廃棄物から、逆に外販できる“商品”を生み出したほか、バイオマスボイラの燃料としても使う。
炭化の過程では焼却炉より排出ガス量が少なく、汚泥の臭気も削減されるなど、環境負荷軽減は功を奏しているという。
中越パ、農業向けなど用途拡大
一方、中越パルプは川内工場(鹿児島県薩摩川内市)で年5000トン前後の炭化材を生産している。2002年に炭化設備を更新したのを機に始めたもので、販売先は約9割が製鉄向け、約1割が土壌改良材や肥料原料など農業向けだという。
炭化材ビジネスの歴史は、北越コーポよりやや長い。中越パルプは「調湿材や消臭材としても期待が持てる」とし、用途の拡大を探る方針だ。
炭化設備では、酸素を遮断しながら製紙汚泥を蒸し焼きにし、炭素分を燃焼させずに分解(炭化)する。北越コーポ、中越パルプとも50年の脱炭素や循環社会づくりに向け、廃棄物の削減と有効利用を推進中。紙・パルプ以外の“もう一つの商品”で持続可能な事業をアピールしていく。