環境に優しいだけじゃない、日本初「燃やさない」ごみ処理施設

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一般廃棄物処理施設「バイオマス資源化センターみとよ」(香川県三豊市)

香川県の西部に位置する三豊市。北は瀬戸内海、南は徳島県に接し、中央部に三豊平野が広がる海、山、田園地帯を有するこの地域では、日本初の廃棄物処理技術が約6万人の生活を支えている。2017年に稼働した一般廃棄物処理施設「バイオマス資源化センターみとよ」は、「ごみを燃やさず、排水や臭気を出さない」可燃ごみの処理施設で、多くの自治体などから注目を浴びる。基盤となる技術を日本に持ち込み、三豊の地で発展させたのが施設を運営するエコマスター(香川県三豊市)だ。

ごみを燃やさず、石炭代替品に

一見、想像し難い取り組みかもしれないが、微生物を活用することでこれを実践している。

同施設では、回収した家庭・事業者の可燃ごみ(一般廃棄物)を破砕、微生物などと混合して発酵槽の中で分解処理する「トンネルコンポスト方式」と呼ぶ処理方式を日本で初めて採用した。

バイオトンネルというコンクリート製の槽内で、微生物の発酵作用により生ごみや草木などを17日間かけて粉々の堆肥状に分解する。発酵過程で熱が発生し、槽内の温度は約70℃まで上昇するが、その熱により微生物で分解されない紙、プラスチック、布などの水分が蒸発し乾燥する。「発酵乾燥」といわれる一連の処理を行い、異物を除いて残った紙、プラスチック、布などを固形燃料の原料として活用している。工場で加工された廃棄物由来の固形燃料は、石炭の代替品として製紙工場などでボイラー燃料として使われる。元来、焼却施設が排出していたCO₂を削減することができ、固形燃料の石炭代替効果と併せて年間約10,000t(約6,000世帯分)のCO₂を削減している。

トンネルコンポスト方式によるリサイクルの流れ

バイオマス資源化センターみとよは、日量43.3トンの処理能力を有し、年間約1万トンの可燃ごみを処理している。施設内は、発酵乾燥を行うバイオトンネルに加え、槽内の環境を制御する送風設備、廃棄物を選別する後処理設備などで構成され、一般的なごみ焼却施設よりも簡素だ。バイオトンネル内は微生物が活動しやすい環境にアプリケーションで管理し、処理過程で発生する排水は、湿度調整のため槽内へ散布するため循環利用している。

バイオマス資源化センターみとよのバイオトンネル

地元経済が連携、互いの強みを生かす

同施設の鎌倉秀行センター長は、「これまで焼却するしか手段のなかったものを燃やさずに処理でき、エネルギーとしても有効活用できる」と強みを説明する。こうした処理技術はどのようにして三豊市に根付いたのか

トンネルコンポスト方式の処理技術は、2004年頃に産廃処理業を営むエビス紙料(香川県観音寺市)の海田周治社長(エコマスター代表取締役)が環境機器の視察先であるヨーロッパで出会った技術だ。興味を抱いた海田社長は「コンパネなどで小型の発酵槽を再現し、同様の方式を試してみたら上手く処理でき臭気も少なく、将来性を感じた」と語る。

その後、エビス紙料は、同じ香川県西部で事業展開する廃棄物処理業のパブリック(香川県観音寺市)と連携する。もともと廃棄物由来の固形燃料を生産していたエビス紙料と、生ごみを微生物で堆肥化する事業を展開し、ごみの微生物処理のノウハウを持つパブリックが意気投合。互いの強みを生かし、三豊市でトンネルコンポスト方式の施設稼働に向けた提案を本格化するため、2010年に両社の折半出資でエコマスターを設立。エビス紙料の海田社長と、パブリックの三野輝男社長(現会長)が共同で代表取締役に就いた。

2011年には三豊市が「燃やさない」ことを条件とした新しいごみ処理方式を公募、市内に下水処理場がないこともあり、排水を出さない新方式がプロポーザルで採択された。「トンネルコンポスト方式」の名称は、採択後に市が提案したものだという。その後、コンテナの小型テストプラントを輸入し実験を重ねた。

2012年には三豊市と協定書を交わし、民設民営でごみ処理施設を新設することが決定。その後も地元住民への説明や、固形燃料の需要先確保などに市と連携して取り組み、2017年にバイオマス資源化センターみとよを稼働した。「施設を稼働できたのは行政の後押しに加えて、新しい技術を地域の方々に理解してもらえたことが大きい」と三野代表は振り返る。

三豊で育んだ処理技術を全国へ

トンネルコンポスト方式のごみ処理施設は、一般的なごみ焼却炉に比べて設備投資や運営コストを抑制できるほか、煙やダイオキシンなどが発生しないことから、環境への配慮にもつながる。他の自治体でも導入を検討する動きはあるが、「日々製造される固形燃料の需要先確保がネックになっていた」(鎌倉センター長)と明かす。

だが、2050年カーボンニュートラル達成を目指す政府方針などを皮切りに、企業の意識は変化している。工場などで石炭利用が難しくなる中、「ボイラーの更新も進み、固形燃料の利用促進に向けた土壌が形成されつつある」(同)という。

こうした社会の変化や、自治体や産廃業者などからの関心を背景に、トンネルコンポスト方式の他地域展開を支援する新会社「エコマスター・ジャパン」をこのほど設立した。施設の運営実績を持つエコマスターと、プラントの設計・施工会社、アプリケーションシステムを扱う代理店が出資し、同方式のごみ処理施設の設計から施工、技術指導まで、一貫対応できる体制を整えた。今後は製紙工場など固形燃料の需要先確保が見込める自治体に提案し、普及を目指す。

鎌倉センター長は「三豊発の技術を全国へ発信し、持続可能な社会の実現に貢献していきたい」と期待を込める。近い将来、地域発の環境に優しい技術が、より多くの人びとの暮らしを支えるようになるかもしれない。



【企業情報】
▽所在地=香川県三豊市山本町神田30の1▽代表取締役=海田周治氏、三野輝男氏▽設立=2010年▽売上高=2億7000万円(2021年3月期)

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