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東急グループの礎を築いた五島慶太、古美術収集の豪腕もすごかった!

東急グループの礎を築いた五島慶太、古美術収集の豪腕もすごかった!

昭和を代表する建築家・吉田五十八が設計した五島美術館 photo by Shigeo Ogawa

東急グループの礎を築いた実業家・五島慶太は、自ら「古経楼」と号する古写経の大コレクターだった。次々とM&A(合併・買収)を仕掛けるその豪快な経営手法から、“強盗慶太”の異名もあった慶太は、古美術の収集に関しても豪腕を発揮していたようだ。

事業で定期的に関西を訪れた慶太は、古都奈良の文化の香りに次第に引き込まれたという。その収集は古写経から僧侶の書(墨跡)へと広がり、実業界の茶会「延命会」への招きもあって茶道具にも関心が移っていった。慶太にとって、古美術の収集は「心の安らぎであった」と学芸課長の砂沢祐子氏はいう。

慶太が生涯、師と仰いだ阪急電鉄(現・阪神阪急東宝グループ)の創設者・小林一三の書簡には「あとの鳥が先になり、口惜しき次第に候」と慶太について触れた記述がある。実業界屈指の美術収集家で茶人の一三にそう言わしめるほど、慶太は貪欲だったらしい。

美術館の設立を決めた晩年には、国宝の「源氏物語絵巻」や「紫式部日記絵巻」を含むコレクションを一括購入している。これらの目玉作品と、慶太が長年収集してきた日本と東洋の古美術品をもとに構成する「五島美術館」が1960年に開館した。慶太はその前年、完成を目にすることなく世を去った。

寝殿造りの意匠を取り入れた本館と、庭園の茶室は国の登録有形文化財である。2011年に日本有数の特殊文庫の一つである大東急記念文庫と合併し、20年には開館60周年を迎えた。武蔵野の面影を残す約5000坪の庭園には、まもなく新緑の鮮やかな「青もみじ」が姿を現すだろう。

4月生まれの慶太の生誕140年を祝い、彼が収集した古筆や歌仙絵を中心に紹介する館蔵「春の優品展―吉祥の美」が現在開催中だ。4月29日からは源氏物語絵巻も併せて展示され、平安時代の華麗な王朝絵巻の世界観が味わえる。

【メモ】▽開館時間(通常)=10―17時▽休館日=月曜日(祝日の場合は翌平日)など▽入館料=展覧会により異なる▽最寄り駅=東急大井町線「上野毛駅」▽住所=東京都世田谷区上野毛3の9の25▽電話番号=050・5541・8600

日刊工業新聞 2022年4月8日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
官僚を経て実業界に転身した五島慶太。小林一三に見いだされて渋沢栄一の「田園都市計画」に参加し、事実上の開発責任者となったのは有名な話。一三の経営手法に倣い、東急グループを一代で築いたことから“西の小林・東の五島”と称される。教師を務めた後、苦学をして東京大学法学部に入ったため教育にかける思いは強く、東横線沿線に東京工業大学や慶応義塾大学などを誘致して学園都市を形成したほか、東京都市大学グループを運営する五島育英会も設立している。

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