ファミリービジネスは一般企業よりも安泰!?コロナ禍対応の実態調査で分かったこと
100年経営研究機構(東京都渋谷区、後藤俊夫代表理事)は、創業家・親族が役員や株主であるファミリービジネス(FB)の実態を捉えた「ファミリービジネス白書2022年版」をまとめた。FBとも関係が深い長寿企業を対象に、コロナ禍での危機対応の実態を調査した。上場FBの中で創業家などの持ち株比率が低いにもかかわらず、創業家出身の経営者を輩出している企業の特徴を明らかにした。
FB白書の発刊は15年、18年に続き3回目。上場FBの経営分析に加え、コロナ禍に挑むFBの実態を調査した。FBは上場・非上場を含む国内企業の96・9%。うち上場企業における20年度のFB比率は49・3%(1848社)と半数近くを占める。
財務指標を基に収益性と安全性の観点から上場企業を対象にFBと一般企業を比べた結果、コロナ禍でも上場FBが優位だった。20年度は収益性の指標となる総資産利益率(ROA)が一般企業で4・19%に対し、FBは4・89%。安全性を示す自己資本比率は一般企業が51・21%、FBは55・26%となった。
創業100年以上の長寿企業95社が回答したコロナ禍の対応に関する緊急調査(20年5月に実施)結果も公表した。新型コロナウイルスが影響を及ぼす期間を「2年以上」とみる割合は64・2%を占め、感染が続く現在の状況を予見した長寿企業の洞察力が浮き彫りになった。同時に回答企業の60・9%が「1年以上は資金繰りが持つ」と答え、安定した資金を備えていることも分かった。
白書では創業家など(ファミリー)の株式所有と経営の関与を基に、上場FBを六つに区分して考察した。この中で創業家などの持ち株比率が低いものの、創業家出身の経営者を輩出しているFBに着目。この区分を「C区分」と名付け、五つの特徴を捉えた。
特徴は次の通り。①取締役会でファミリー出身の経営者が2人以上いる②役員昇進が早く、就任した年齢が若い③取締役会の中でファミリー出身者が筆頭株主または複数のファミリーメンバーを合計すると筆頭株主④株主が広く分散している⑤株主構成上、他のFB区分と比較して機関投資家や信託勘定の割合が高い―という。
白書の企画編集委員長を務めた静岡県立大学の落合康裕教授は「きちんとパフォーマンスを出せる前提であれば、創業家がマジョリティーを持たなくても経営者を輩出できる」と分析する。後藤代表理事は「海外ではFBは尊敬される存在。白書を通じてFBの事実を見てもらいたい」と話している。