課題山積み、日商の次期会頭・小林三菱商事会長が問われる手腕
日本商工会議所は17日、都内で通常会員総会を開いた。日商会頭を兼務する東京商工会議所の三村明夫会頭の後任には、三菱商事の小林健会長が内定しており、三村日商体制は残り8カ月を切った。トップの交代期を迎える中で、原材料価格の高騰やコロナ禍からの回復など中小企業を取り巻く課題は山積しており日商の役割があらためて期待される。(編集委員・池田勝敏)
三村会頭は総会で「直面する社会課題の克服に向けて、我々商工会議所が果たすべき役割は極めて大きいものがある」と強調した。
三村会頭は2013年に就任。デジタル化による中小企業の生産性向上と取引適正化を「両輪に走ってきた」(日商首脳)。東商ではIT活用を支援する「『はじめてIT活用』1万社プロジェクト」を展開。コロナ禍で社会のデジタル化機運が高まる中で中小企業のデジタル化支援強化に向け政策要望を訴え実現してきた。
一方、中小製造業の労働生産性が、大企業との取引価格引き下げにより低く抑えられてきたことを問題視し、取引価格の適正化に尽力してきた。経済産業省・中小企業庁が設置した価値創造企業に関する賢人会議の座長に就任。発注側の企業が下請け取引適正化を宣言する制度「パートナーシップ構築宣言」のベースを築いた。同制度を、中小企業の賃上げ原資確保や原材料価格の上昇に対応するための切り札として、「他の省庁や官邸まで巻き込んで大きな動きにしようとしている」(同)。
この発信力の高さは、「最低賃金の議論をめぐって中小企業の立場に立って政府にはっきりと意見してきた。日商の存在感も高めた」(ある東商副会頭)ことからもうかがえる。任期は通例2期6年だが、東商23支部長の要請を受けて異例の3期目に入ったのもこうした姿勢が評価されたものだ。
後任の小林氏は初の総合商社出身。三村会頭は「中小企業に寄り添いながら、日本全体を考えて政策提言できる人が望ましい。そのためにはグローバルの視点を持つ必要がある。中小企業だけでなく、大企業、スタートアップの実態もよく知っている」と期待を示す。
小林氏は「苦境にある中小企業への支援と同時に、生産性向上や事業再構築などの中小企業の自己変革を後押ししていくことが東商の大きな課題だ」とコメントした。中小企業の生産性向上は道半ばだ。日本経済を再び成長軌道に乗せるには中小企業の生産性向上が欠かせない。中小企業の可能性を引き出す手腕が小林氏に問われる。