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【ディープテックを追え】宇宙用コンピューターの価格低減でビジネス振興

#61 Space Cubics

放射線の影響が強く、データが破損しやすい宇宙空間。それらの対策を施したコンピューターは当然コストが高くなってしまう。宇宙航空研究開発機構(JAXA)認定ベンチャーのSpace Cubics(スペースキュービックス、札幌市中央区)は低コストの宇宙用コンピューターを開発する。後藤雅享最高マーケティング責任者(CMO)は「コンピューターのコストを下げて、いろいろな企業が宇宙でビジネスをできる環境を作りたい」と意気込む。

JAXAの経験から起業

後藤CMO

後藤CMOの所属は今もJAXAだ。2002年の入社から有人宇宙技術部門で勤務。主な成果は地球から遠隔操縦し、国際宇宙ステーション(ISS)内を飛ぶ飛行ロボット(ドローン)の全体設計だ。

荘司CEO

そのソフトウエアの設計を担った荘司靖最高経営責任者(CEO)が誘う形でスペースキュービックスを創業した。初めは「冗談かと思った」(後藤CMO)が、ドローンに搭載したコンピューターや電子部品の価格が高かったこと思い出した。「環境の厳しい宇宙で確実に動くものを作ろうとすると、どうしても高くなってしまう」。

このため、JAXAで開発したドローンには民生品のコンピューターを採用した。搭載するソフトウエアを冗長性の高い設計にし、宇宙で活躍できた。ただプロジェクトごとにソフトウエアを一から設計しなければならなかった。「この宇宙用コンピューターを汎用的に作ることができれば、宇宙参入のコストやハードルが下がるのではないか」―。後藤CMOは開発に参画することを決めた。

宇宙用コンピューターの弱点を補う

宇宙用コンピューターの課題は放射線への対応だ。宇宙空間のデータを収集し地球に送り返す際、放射線を受けた半導体の電荷に不具合が起き、データに文字化けなどのバグが生じてしまう。通常、宇宙用の電子機器には「ラドハード」という放射線への耐久を施した製品が使われる。バグを防ぐため、部品の耐久性を高めるという対策が取られてきた。

同社の宇宙用コンピューター

一方、同社の宇宙用コンピューターでは不具合を検知し、データに修復をかける機能で対応する。不具合が起きることを前提に設計しており、放射線によって不具合が起きても機能を停止せず復旧することで動き続ける。高度な技術が求められるが、例えば同じデータを複数箇所に持たせることで実現する。部品の一つが不具合を起こしてバグが生じても、他のデータと多数決を取ることでデータの正確性を判定。複数の機器を運用することで冗長性を持たせた。

また、宇宙でのミッションが高度化することも想定。搭載する半導体をFPGA(演算回路が自由に書き換えられる)にすることで、ミッションに応じて必要な機能を追加できるようにする。宇宙用に特別な部品を使わず、コンピューターの価格を下げる。荘司CEOは「いろんな技術を動員している。簡単にまねできない」と強調する。23年6月には小型の宇宙ロケットを開発するスペースワン(東京都港区)と共同で人工衛星を打ち上げ、宇宙用コンピューターの性能を実証する。

ターゲットは宇宙だけではない。発電所やデータセンターなど、動き続けることを前提にしたインフラ設備での導入も目指す。後藤CMOは「現状では宇宙産業の市場規模は小さい。ただ、環境が厳しい宇宙で使える製品であれば地上での使い道はある」と力を込める。将来は販売網を広げ、コンピューター価格低減を通じて多くの企業が「月を目指せる」社会にしたいと展望する。

この連載では、「ディープテック」と呼ばれる先端テクノロジーの事業化を目指す企業を掲載します。
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小林健人
小林健人 KobayashiKento デジタルメディア局DX編集部 記者
あらゆる機器にコンピューターが搭載される中、宇宙においても例外ではありません。今後、通信を目的に小型衛星が打ち上げられていきます。現在のプレイヤーに加えて、異業種からの参入がどこまで増えるのか。その点が市場拡大のカギを握るのではないでしょうか。

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宇宙船を開発する米スペースX、バイオベンチャーのユーグレナ-。いずれも科学的発見や技術革新を通じて社会問題の解決につなげようとする企業で、こうした取り組みはディープテックと呼ばれる。日本でディープテックに挑戦する企業を追った。

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