auカブコム証券が運用する「投資助言ロボ」の実力
auカブコム証券(東京都千代田区、石月貴史社長)は、ロボアドバイザー(コンピューターによる投資分析)を活用した信用取引の投資助言サービス「信用ロボアド」の本格運用を2021年3月に始めた。リスク管理や推奨銘柄、売買タイミングなどについて助言する。5年目以降に黒字化する事業計画だが、その想定を上回るペースで実績を積み上げているという。もうすぐ判明する1年間の運用成績を踏まえ、機能などを点検し改善を図る。(高島里沙)
信用ロボアドは、投資顧問契約を結んだ顧客に個別銘柄の助言を行う。独自の売買戦略を基に3000を超える日本株から条件に合う銘柄をアドバイスする。顧客は毎月1100円(消費税込み)の投資顧問料と、運用実績に応じた成功報酬として運用益の11%を負担する。
また信用ロボアドは発注を自動化する機能「発注アシストモード」を有する。発注するかどうかの最終的な投資判断は顧客に委ねる。顧客にとっては取引の手間と時間を減らせるのがメリット。
信用ロボアドの最大の特徴は、信用取引の売りと買いを組み合わせることで、株式相場の上がり・下がり局面のどちらでも利益を追求する点だ。一般的に投資信託は運用方法に制限があり、相場が一方向に動いた時だけ利益が出る仕組みがほとんどだ。信用ロボアドは、先物や信用取引の活用で市場が上がっても下がっても利益を追求することを目的にするヘッジファンドのように、相場に左右されにくい運用を目指す。
信用ロボアドはあらかじめ設定したプログラム通りに売買を行うシステムトレードだ。人工知能(AI)の一種であるアルゴリズムトレードで信用ロボアドを動かしている。過去の株価推移といったデータ分析に基づく17種類の売買戦略と、信用取引の売り・買いを組み合わせた複数戦略で相互補完する。一定条件を基に推奨銘柄を抽出する。
投資家はシステムで決められたことに沿って投資する。河合達憲投資情報室長チーフストラテジストは「システムトレードにおいては1勝4敗であっても、4敗に執着せず勝つと信じてもらうことが大切だ」と強調する。人間とは違ってドライに判断できるシステムを信じられるかが問われるというわけだ。
もうすぐサービス開始から1年を迎え、年間の運用成績が明らかになる。契約者数は非公表だが、当初計画を上回る実績を積み上げているという。17種類の売買戦略が機能していたかどうかなどを点検し、戦略の改善なども図りながら機能を進化させていく方針。
現在は、100万―1000万円までの5種類の資金帯において積極型と安定型の2種類の運用コースの中から、計10種類のコースを選べる。今後は設定金額の追加なども検討している。
河合氏は「証券会社として健全な助言サービスに努めたい」とする。地に足を付けた堅実な姿勢で信用ロボアドを進化させていく考えだ。