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民間で唯一、全国1000カ所で活躍する「花粉観測ロボ」の開発秘話

民間で唯一、全国1000カ所で活躍する「花粉観測ロボ」の開発秘話

ポールンロボ開発当初から関わってきた森田清輝執行役員

ウェザーニューズは環境省が2021年12月に花粉観測システム「はなこさん」の運用を終了したことにより、全国規模で花粉飛散量の自動観測を手がける唯一の民間企業になった。花粉観測ロボット「ポールンロボ」を協力世帯「里親」に貸し出して全国1000カ所の花粉飛散量を観測。集めたデータと風の情報を組み合わせて解析したデータを提供している。

1990年代から鼻水などの花粉症が〝国民病〟となり、花粉観測の需要が増加。当初はビルの屋上などでプレパラートに集まった花粉量を顕微鏡で数えるダーラム法で測定していたが、より広く正確な情報を収集するため、ポールンロボを開発した。

ポールンロボは風通しの良い軒先やベランダに設置。ロボット内部のファンで外気を吸い込み、外気の通り道の管の中に付着した花粉量をレーザーセンサーで測り、数値を送信する。ロボが観測した花粉量のデータと風の情報から花粉の飛散状況を解析し、一般向けにウェブサイトで公開するほか、学術研究用途にも提供している。

花粉観測で使用されているポールンロボ

一方で、広範囲での観測では場所と電源、通信の三つの確保が課題だった。全国各地の観測に必要な三つを自前で用意するには費用が膨大となり、運用する上で難点だった。

開発当初から担当する森田清輝執行役員は、桜の開花や空模様の観測に会員によるデータ提供を用いていることから「世の中には季節感を測り、発信したい人がいる」と考え、現在の里親の元へポールンロボを貸し出して観測する方式を考案。地域の一般利用者のほか、耳鼻科医院や企業などが募集に応じたことで、場所と電源、通信の三つを確保できた。

観測に必要なロボットの受け入れ先を増やすため、ボディーのデザインも改良。初代機は四角いボディーだったが、「人に渡してかわいがってもらうためには、丸みのある愛着を帯びたものに」(森田執行役員)と、丸いボディーにセンサーやファンを内蔵する設計にした。

現在活躍するポールンロボは8代目。全国1000カ所の受け入れ世帯「里親」の元へ貸し出され、花粉の観測を支えている。森田執行役員は「サポーターがいるからこそできるもので、役割は大きくなっている。社会的意義があると思う」と花粉飛散量のデータ測定、提供を通じて花粉症に悩む人の生活を支え続ける考えだ。

日刊工業新聞 2022年2月18日

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