「雨雲レーダー」が革新的に進化した。半日先まで“くっきり”の仕組み

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AI技術の活用などにより雨雲レーダーが進化した(写真はイメージ)

雨がいつ、どこで、どれくらい降るかがスマートフォン上などで一目でわかる「雨雲レーダー」の進化が止まらない。民間気象会社のウェザーニューズは、半日以上先の降雨状況について250mメッシュかつ10分間隔という高解像度の可視化に業界で初めて成功した。スマートフォンアプリ「ウェザーニュース」で提供を始めた。同社が3時間先の降雨状況の高解像度化に成功したのはわずか2年前。雨雲レーダーがこれほど短期間で進化した背景には人工知能(AI)技術がある。(取材・葭本隆太)

1日の行動を事前に判断しやすくなる

「革新的な進化だ」。ウェザーニューズ予報センターの西祐一郎グループリーダーは雨雲レーダーの大幅な高解像度化の成功に胸を張る。従来の雨雲レーダーでも3時間先までは250mメッシュかつ10分間隔で予測していたが、3-15時間先については1km-5kmメッシュかつ1時間ごとの予測だった。新しい雨雲レーダーは3時間先以降の予測を大幅に高解像度化した。

西グループリーダーは「(新雨雲レーダーによって)1時間先と半日先の雨雲の状況を(10分間隔かつ250mメッシュという)同じ目線で確認できるため、直感的に理解でき、1日の行動を前もって判断しやすくなる。例えば、夕方まで外出する日の朝に洗濯物を外に干すかどうか判断したり、朝の段階で夕方の子供のお迎えに行く手段を考えたりといったシーンで使ってもらえるのではないか」と期待する。

この進化の背景には二つの要素がある。風や気温などを変数にした物理方程式で将来の大気の状態を予測する「数値予報」と「AI技術」を活用したことだ。

3時間先までの予測は、雲の過去の移動状況を地形の状況などを加味しながら延長する方式で予測する。ただ、その方法で4時間先以降を予測すると「現実と乖離してしまう」(西グループリーダー)。日本列島の観測網の外から雲が移動してくるケースなどを考慮できないからだ。そこで、予測手法をがらりと変えて「数値予報」を活用し、10分間隔で予報結果を算出することで時間の解像度を高めた。

AI技術の挑戦が実を結んだ

ただ、数値予報は5kmメッシュの空間解像度で算出する。より空間解像度を高めて数値予報を行おうとすると、計算量が大きくなるため、「高い計算能力を持つスーパーコンピューターが必要になり、民間会社としては(コスト的に)厳しい」(西グループリーダー)。そこでAI技術を活用した。

具体的には、過去数年分の数値予報の結果とその時々の250mメッシュの雨雲レーダーの画像をAIに学習させることで、新たな数値予報の結果に適合する250mメッシュの雨雲レーダーの状況をAIが推測できるようにした。

西グループリーダーは「今回の高解像度化の成功の裏側としてはAI技術が大きい。AI技術の発展に社内で取り組み、いろいろと挑戦してきた中で実を結んだ成果の一つだ」と力を込める。

実際に雨が降った回数に対してその雨を予測していた回数の割合で予報精度を示す「捕捉率」について、雨雲レーダーの1時間先予測では97%に上る。3時間先の予測でも約90%を誇るという。15時間先の予測の精度については検証を始めたばかりでまだ未知数だが、「1時間先や3時間先に比べると15時間先の予報の精度はどうしても下がると思う。(その中で検証結果を踏まえて)AIに学習させるデータを増やしたり、数値予報のパラメーターを微調整したりして(修正を加えながら)高い精度を維持していきたい」(西グループリーダ-)という。

また、今回活用したAI技術は熱中症や花粉飛散の予報に応用することで、それぞれの機能の充実などを図れる可能性があるという。ウェザニューズはAI技術の進化やそれによる天気予報の高度化の挑戦を続ける。

ニュースイッチオリジナル

COMMENT

葭本隆太
デジタルメディア局
ニュースイッチ編集長

雨雲レーダーの進化の背景には生活者の雨雲レーダーに対する関心や期待が高まっていることも大きいようです。需要が大きいのでウェザニューズ社としても投資しやすいとか。確かに一昔前に比べて目にする機会が格段に増えた気がします。一方で、半日先における10分単位の予報が生かされる場面は果たしてあるのかと思ったりもします。30分後に自宅に帰る予定を、雨雲レーダーを確認して切り上げるといった行動をする人が出てきたように、半日先のきめ細かな予報が人の行動を変える未来があるのでしょうか。

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