欧米企業相次ぎ買収した日立、CFOが語るこれからの財務戦略
日立製作所は資産効率の改善を急ぐ。ここ2年間で合計約2兆円かけて欧米企業を相次ぎ買収した。2021年3月期時点で資産が11兆8528億円まで膨らみ、総資産回転率は0・74回に低下してしまった。
河村芳彦執行役専務兼最高財務責任者(CFO)は「(低収益な)悪い資産を積んでいるとバランスが悪くなる」と、資産とキャッシュ創出力の関係に気を配る。国内同業他社の総資産回転率と比較すると、大型M&A(合併・買収)に消極的な点は考慮に入れる必要があるものの、東芝が0・89回、三菱電機が0・87回と日立を上回る水準だ。
今後は日立金属など上場子会社や関連会社の売却を加速して資産を10兆円規模まで圧縮し、総資産回転率を製造業として理想的な1回に近づける必要がある。「売り上げを追求しながら、資産の規模は指標を置いてコントロールする」と事業の新陳代謝に注力する。
資産売却は大型企業買収で増加した借り入れの返済にも有効だ。負債資本倍率(D/Eレシオ)は一時的に悪化しており、財務健全性を心配する向きはある。D/Eレシオは一般的に1倍を超えると借金過多で、1倍以下なら健全と言われる。日立は従来0・2―0・3倍で推移していたが、足元で0・7倍強まで上昇している。
ただ、河村専務は「一般論で言えば、成長のために投資が必要で、レバレッジをかけて投資しても2―3年後に回収できれば特段問題はない」と落ち着き払う。それでも株式市場への配慮は大事であり「当社は(D/Eレシオ)を伝統的に低い水準で制御してきた歴史があり、23年3月末までに0・5倍程度までちゃんと戻す」と見通しを示す。
10年以上を費やした構造改革とM&Aの成果として、営業キャッシュフローを年間約8000億円稼げる体質に変わった。この営業キャッシュフロー創出力は借金返済にも、成長投資にも振り向けられ、デジタル変革(DX)とグリーン化(GX)へ軸足を移す日立グループにとって経営の自由度を格段に高める。
【関連記事】 日立が絶対に売却しない子会社とは?