中国経済減速も打撃、日立・東芝のグループ再編は進化につながるか

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2022年の電機業界は良くも悪くも大きな変革の年になりそうだ。デジタル変革(DX)とグリーン化(GX)が市場に新たな風を吹かせ、それに合わせて日立製作所や東芝は100年以上かけて出来上がったコングロマリット(複合企業体)の形を変える。一方、中国恒大集団の経営危機に代表される中国経済の減速感は巨大市場に依存する日本勢にも打撃となりかねない。変化が進化につながる1年を期待したい。(編集委員・鈴木岳志)

全世界でのDX投資は米調査会社IDCによると、2024年に19年比2倍の2兆4220億ドル(約276兆円)に拡大して年平均でも15%と高い成長率を示す見通し。特に製造業での投資が全体の3分の1を占めており、IT導入拡大による生産性向上やビジネスモデル転換などが見込まれる。

日立製作所は21年7月に約1兆円かけて米IT企業のグローバルロジックを買収した。同社はまさに顧客のビジネスモデルのDX支援を得意とし、今後日立がIT分野へさらに傾注する上で重要な橋頭堡となる存在だ。日立の小島啓二社長も「IT部門の品ぞろえはほぼそろった」と語り、今後は手に入れた武器を駆使して世界戦に挑む。

9月にはパナソニックも、サプライチェーン(供給網)管理用ソフトウエアに特化した米ブルーヨンダーを総額約8633億円で買収した。DX推進に向けて足りないIT資産があれば、かつてはハードウエア中心だった日本勢も大型M&A(合併・買収)をいとわない姿勢だ。

GXも同じくこれからのキーワードだ。日立の小島社長が「グリーン、デジタル、イノベーションを成長の基軸にする」と話すように、発電や送配電設備を手がけてきた重電メーカーにとって脱炭素の新潮流はピンチであると同時に、大きなチャンスでもある。

東芝は国内において今後10年間で再生可能エネルギー関連の投資が全体で50兆―80兆円規模必要になると試算する。綱川智社長は「カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)の実現に向けた課題を解決していくことを大きな成長のチャンスと捉えており、東芝グループの持つ技術・顧客基盤をさらに強化すべく先行投資していく」とGXに期待を寄せる。

東芝はGX市場に自らの形を合わせるように、グループ全体の3社分割計画を打ち出した。23年度下期を目標に、エネルギーやインフラ、昇降機などのインフラサービス会社と、パワー半導体やハードディスク駆動装置(HDD)などのデバイス会社、キオクシアホールディングス(旧東芝メモリホールディングス)や東芝テック株式を管理する東芝の計3社に再編する。

一部大株主の反対もあってこの大胆な計画の実現は容易ではないものの、GXという大波が取締役会や執行側を突き動かした側面は否定できない。綱川社長は「それぞれの市場にフォーカスし、執行部が早い判断でグローバルに勝ち抜ける経営体制にする。(東芝グループの)解体ではなく、未来に向けた進化だ」とスピンオフの意義を強調する。

日立は現在、上場子会社を中心としたグループ再編が大詰めだ。最後の“日立御三家”である日立金属の株式売却は当初予定の21年度中から22年度中にずれ込むが、これは一部の国で独占禁止法の手続きが終わっていないだけで大勢に変更はない。日立建機の一部株式売却についても21年度中に方針を明らかにするという。

日立製作所の針路はDXとGXであり、同じ道を歩んでいけない事業は売却や他社との統合でグループ外へ切り出すのが基本戦略だ。歴史ある事業であっても、DXなどでシナジーが薄ければ袂を分かつ非情な決断が必要になる。総花的だったかつての総合電機メーカーは今や時代とともに絶滅しつつある。

恒大経営危機、中国市場変調に警戒

不動産大手の中国恒大集団などの経営危機は中国経済の減速懸念を膨張させている。習近平指導部が過熱した不動産投資にブレーキをかけており、まず起こる建設関連需要の縮小が日本の電機メーカーにも影響を及ぼす。

中国の昇降機市場でシェア首位の日立ビルシステム(東京都千代田区)は販売動向に神経をとがらせる。光冨真哉社長は「足元で受注がすごく落ちているわけではないが、これまでの高い伸びではなくなってきている」と変調を肌で感じ取る。

「中期的には安定成長に戻るだろうが、短期的に過熱気味のバブルから安定成長に戻る道筋が今はまだ見えない」と不安が募る。

中国のエレベーター市場は世界最大の年間60万台以上あり、日本市場の約2万台とは桁が違う。中国変調の影響は当然ながら日立だけでは済まない。

昇降機専業のフジテックも重要市場を注視している。内山高一社長は「リスク管理によりそれほど影響はまだ受けていないが、不動産業界の資金問題や建設プロジェクトの遅延の話はたくさん聞く」と明かす。ただ、世界最大市場に変わりはない。内山社長は「足元の問題は多いが、中期的にまだまだ伸びる市場なのでしっかりやっていきたい」と腰を据える。

巨大市場の景気減速が昇降機以外にも波及するかは予断を許さない。

日刊工業新聞2021年1月1日

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