投資家から「親子上場」解消求める声、ブラザーがニッセイを完全子会社化した経緯
ブラザー工業は、歯車と減速機を主力とし東京と名古屋の証券取引所2部に上場する子会社のニッセイを2月をめどに完全子会社化する計画だ。2021年11月9日―12月21日にTOB(株式公開買い付け)を実施。持ち株比率を60・17%から96・72%に引き上げた。上場廃止の手続きを進めている。
「成長の一翼を担う重要な会社。連携を深める」と佐々木一郎ブラザー工業社長は狙いを説く。ブラザー工業はマシナリー・工場自動化(FA)事業を中長期の強化課題に位置付けており、歯車や減速機は最終製品の性能を左右する重要要素だ。
さらにニッセイは21年にロボット専用減速機を発売。22年1月には歯車の品質・性能を高める熱処理工場棟も本社工場(愛知県安城市)内に稼働した。両社で付加価値をさらに高め顧客を広げる。
「株式の過半数を握っていても、上場企業では経営の独立性や少数株主の利益を尊重する必要があった」と佐々木社長。意思決定に一定の時間がかかってしまっていたのに加え、配当も必要で、長期的な開発投資の足かせでもあった。さらに欧米では異例とされる親子上場には、機関投資家から解消を求める声もあった。
ニッセイの完全子会社化をブラザー社内で議論し始めたのは約2年前。その間に新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し、経営環境が一変した。「工場の稼働をいかに維持するかが経営課題となった」と佐々木社長は振り返る。
しかしブラザーグループでは、本社が司令塔となり世界の各拠点間で感染状況や対処策を共有。工場停止をごくわずかに抑えた。「個々の職場の良い取り組みをグループ全体で迅速に共有する経験ができた。社員の意識が変わった」と佐々木社長は評価する。
歯車や減速機は、需要が拡大するロボット用に、より軽量で高精度・高耐久が求められている。完全子会社化で、ブラザー工業はニッセイの業務改善をさらに加速する考えだ。