ハバチと天敵・寄生バチの不思議な関係、東京農工大などが解明
東京農工大学、神奈川県自然環境保全センター、神奈川県立生命の星・地球博物館は、樹木の葉を食べ尽くすハバチの大発生と、ハバチの天敵である寄生バチの発生にみられる関係を明らかにした。ハバチは年により不規則に発生するが、これに同調して発生する寄生バチを見つけ、寄生率が一定であることを確認した。寄生バチは同調により、宿主を安定的に利用する戦略をとっているようだ。
研究は東京農工大の小池伸介教授、神奈川県自然環境保全センターの谷脇徹主任研究員らが行った。神奈川県の丹沢山地ではハバチの一種、ブナハバチが数年に一度、大発生する。今回はブナハバチを食べる天敵のうち、幼虫をその場で食べる捕食性甲虫と、幼虫に寄生し繭になった段階で食べ、そこで自分の繭を作り直してしまう寄生バチで分けた。2013―18年に生息数などを調べた。
この結果、捕食性甲虫は、ブナハバチが増えるとそれに遅れて増えるという、通常の天敵昆虫のパターンになった。一方、寄生バチはブナハバチと同じ年に同じ程度で発生数が変化し、寄生の割合は一定という異なる状況だった。
ブナハバチは卵から成虫になる期間が、個体により1―4年とばらつき、大発生する可能性が考えられている。対して寄生バチも自身の繭の中で、休眠期間が長い個体があることが分かった。寄生バチは、ブナハバチの発生を何らかの方法で察知し、調整しているのではないかと研究グループは考えている。
日刊工業新聞2022年1月21日