老舗のホテル・日用品メーカー・新聞社、「DX変革」のポイント

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左から八子氏(INDUSTRIAL-X)、明氏(日刊工業新聞社)、山﨑氏(ACAO SPA & RESORT)、黒川氏(ライオン)

INDUSTRIAL-X(東京都港区、八子知礼代表取締役)主催の「Conference X in 東京2021」が開かれ、デジタルトランスフォーション(DX)の先にある産業の未来について、各分野の専門家や現場の責任者が参加し、活発な議論が行われた。

「DX組織カルチャー・チェンジ」のセッションでは、ACAO SPA & RESORTの山﨑勇輝常務取締役、ライオンの黒川博史DX推進部長、本イベントのメディアパートナーである日刊工業新聞社の明豊執行役員デジタルメディア局長がパネラーとして登壇した。

熱海で老舗のホテルニューアカオは築48年が経ち老朽化が進んでいた。そこでDXを前提にした抜本的な事業改革を断行。70万平方メートルの広大な土地を活用し収益を最大化するため、ホテルを「一つのコンテンツ、一つのテナント」と位置づけた。ホテルや飲食などそれぞれに事業部を作り、全社員から事業部長を公募した。

山﨑氏によると「社内公募では、誰が社内改革を自分ごとだと思っているか分かったことが大きい」という。事業部に分けたことで一歩間違えば売り上げの取り合いや、情報共有がうまくいかないことも起きしてしまう。従業員がいつでもどこでも仕事をできるようにモバイルワークを推進したことで、若い人を中心にチャット活用が活発になり、熱海の土砂災害の時は刻々と変わる状況を共有し避難者支援などに役立てたという。

1891年創業で130年の歴史を持つライオン。主力の日用品事業のデジタルマーケティングはかなり進んでいるが、部門間でデジタルリテラシーに関して格差があった。またDXが情報システム部門だけのテーマになることを避け、経営全体の構造改革を見据え、部門間の格差を埋めることを意識したという。

研究者出身の黒川氏は「研究所のAI(人工知能)やデータ活用に対する期待が大きかった。AIの限界を伝え、今できることできないことを丁寧に説明していった」という。今後の目指すべき組織のあり方については「DX推進部がなくなること。会社自体が変われば自然とそうなるはず」と話す。

2019年秋からDXプロジェクトを立ち上げた日刊工業新聞社。新聞業界は紙の部数の落ち込みによって、新しい収益モデルの構築が課題になっている。同社は新聞社の看板を掲げながら、(1)産業情報のサービスプロバイダーになる(2)BtoBメディアの顧客基盤を生かし、既存の広告を代替する企業の販売促進支援サービスを立ち上げる、というDXで目指す2つのビジネスの方向性を定めた。

それを実現するための基盤システムとして、全社のCMS(コンテンツ管理システム)、全社のCRM(顧客管理システム)をわずか1年で稼働させた。新聞社の組織はメディアごとに縦割りになっている。DXプロジェクトのメンバーは専任ではなく、兼務で社内横断的にまず十数名集められた。明氏は「何をやるかは重要だが、誰がやるかはもっと大事。そしてレガシーの変革は人が変わるのではなく、まず人が交わることから始まる」と力説する。

今回のイベントを通じて強調されたことは、DXは単にアナログのデジタル化ではなく、社会課題を解決することが本質であって、企業にとっては顧客体験の向上と収益の創造の両方が必要になるということだ。経営層も社員もいかに当事者意識を持てるか。「できるか、できなないか」の議論ではなく、「やるか、やらないか」という問い掛けである。

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