コマツ・日立建機・コベルコ建機のトップが見通す。建機需要・半導体不足・電動化

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コマツの電動ミニショベルのコンセプトマシン。運転席がなく、遠隔操縦で動かすことを想定している

半導体不足・鋼材高騰足かせ

国内建設機械大手は2021年、中国を除いた世界的な建機需要の回復によって大幅増益となり、業績のV字回復を達成した。22年もこの流れは続き、さらなる業績の上乗せが期待される。一方で主要材料の鋼材値上がりや物流費高騰が続いており、各社の収益の圧迫要因となる。半導体不足も引き続き、重くのしかかる。これに対応できた社とそうでない社で明暗が分かれるほか、電動化をはじめとしたカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)対応も重要テーマであるのは間違いない。(編集委員・嶋田歩)

21年4―9月期の当期利益はコマツが前年同期比2・5倍、日立建機は同151倍と大きく伸びた。コロナ禍の影響が薄れ、世界的に需要が回復。特に北米やアジアの伸びが大きく、比率の高い社は相対的に売り上げを伸ばした。中国だけは減少が続いているが、この落ち込みは他地域の増加で十分カバー。下期は単価の大きい鉱山機械の回復が鮮明になり、一段の売り上げアップが期待される。

他方でコストアップについては、コマツが12月に22年1月受注分からの値上げを表明した。値上げが浸透すれば鋼材などのコストアップは減殺できるものの、半導体不足や調達難の問題もある。遠隔操縦や高精度作業など建機も今やIT機器の占める比率が高くなっており、対応できるかどうかも新たな焦点となる。

電動化についてはミニショベルを中心に商品化の動きが進みそうだ。リチウムイオン電池を搭載した電動ショベルは現状ではパワー不足や稼働時間の問題を抱えており、環境対応や静音工事が必要な夜間作業や屋内作業、欧州市場などで普及が始まりそう。鉱山機械については有線給電のトロリー式が主流になるとみられ、この中間のボリュームゾーンについては燃料電池なのか、水素エンジンか、バイオ燃料など見方が分かれている状態。各社それぞれに電池企業や海外企業などと組んで開発を進めることになりそうだ。

コマツ社長・小川啓之氏「現場向けIT 世界に拡販」

コマツ社長・小川啓之氏

―22年の見通しは。

「一般建設機械は21年比横ばいか強含み。中国は20年特需の反動減で22年もさらに落ち込むだろうが、他の地域は好調だ。特に北米は1兆ドルの公共インフラ事業の支えもあり、底堅い。鉱山機械は21年よりさらに需要が上向くとみている。資源価格の高止まりが続き、投資意欲が強い」

―原料高やコンテナ不足の影響は。

「21年度は鋼材アップで390億円、物流費アップで85億円のマイナス影響。販売価格アップとコストダウンが対応策だが値上げについては22年度は効果がフルに寄与するので影響は抑えられるとみている。余剰が生じている中国工場活用では構造改革で現在の1万7000台の年産能力を1万台に減らす。1万台の工場にグローバルクロスソーシングを活用、ロシアとインドネシアにショベルを各1000台以上輸出させる。コンテナ不足や物流費高騰は22年も続くだろうがさまざまな対策により生産に支障のないようにしている」

―電動化の取り組みは。

「電動化市場は現時点では世界のどこにもない。ただ世界の流れはカーボンニュートラルに向かっており、客先に選択肢を示す責任がある。電動ショベルは容量やパワーの関係から最初はミニショベルで、欧州市場から始まるとみている。他方、大手鉱山会社が30―40年にカーボンニュートラルを実現すると宣言しており、鉱山機械やダンプトラックも市場になるだろう。二つの中間の一般建機、このどこに市場があるか、まだ不明だ。電動化以外にハイブリッドやディーゼル・エレクトリックと、複数の選択肢を示していく。燃料電池はバッテリーより効率性が高い。20トン以下のショベルは電池式、それ以上の大型建機は燃料電池や水素エンジン、もしくは有線式(トロリー)が主流になるとみている。社内の研究開発拠点に燃料電池システムも設置し、研究を始めている」

―デジタル変革(DX)やスマートコンストラクションの取り組みは。

「DX推進は22年度から始まる新中期経営計画にも反映させる。ポイントは人材確保と育成だ。NTTドコモやソニーセミコンダクタソリューションズなど他社と共同で21年に新会社のアースブレインを立ち上げた理由もそこにある。DX時代は意思決定の迅速化と、アジャイル開発が不可欠だ。建設現場向けITサービスは国内だけでなく、米州や豪州、欧州などにも拡販していきたい」

日立建機社長・平野耕太郎氏「北中南米が最重要テーマ」

日立建機社長・平野耕太郎氏

―22年の見通しは。

「需要環境は引き続き良いと思う。建設機械、鉱山機械とも好調で、特に鉱山機械は顧客の投資意欲が強い。唯一、不調なのは中国だが、先をどう読むかは大変難しい。23年1月に新しい排ガス規制が施行される。日米欧の規制は生産規制だが、中国は販売規制。22年末に残った建機は売れないということになる。22年末までは各社とも不良在庫が出るのを恐れ、台数を手控えるのではないか。問題は23年1月以降。環境規制対応の新車に一気に置き換わることになり、春節もある。当局にとっても環境規制はど真ん中の政策で、いろいろ手を打ってくるだろう。答えは出せないが、1月以降の新車需要に備え、コンポーネントを多めに手配する対策は可能だ」

―3月に米ディアとの合弁を解消、北中南米で独自の体制が始まります。

「我々にとっても最重要のテーマ。新商品やサービス、ソリューション、部品供給体制など、いろいろ準備を進めている。南米は鉱山機械需要が伸びているが、現在の体制で台数を増やすのは難しい。23年度以降にきっちり実績を出せる足がかりとしてサービスセンターをどこに置くか、部品倉庫をどこに設置するかなど検討を重ねていく」

―電動化について。

「電動ショベル開発はドイツと日本で行っており、ドイツでは8トンショベルを20年から販売し同年に25台、21年は50台を販売見込み。日本では5トンの小旋回ミニショベルを客先で試験しており、21年度中の発売を目指す。環境性能に加え、静音なので夜間工事や病院、学校周辺でも使えると好評だ。10トン以下の建機はバッテリーが主流になるだろう。一方、鉱山機械はパワーも稼働時間も必要なので、有線給電式が主流になるとみている。中間の20トンや30トンショベルのボリュームゾーン、これがどこへ進むかが重要なポイント。燃料電池や水素エンジンはどちらも供給インフラや高価格の問題がある。我々も基礎研究を始めている」

―自動運転や安全への取り組みは。

「人手不足を背景に需要は強まるとみている。安全対策は従来は建機にセンサーを取り付ける方法が主流だったが、建設現場はさまざまな人が出入りするので建機だけでなく、周りの機械や人の動きも合わせて管理する必要がある。自律無人運転はABBと共同でダンプトラック開発を進めており、24年度に顧客へ試験納入する計画。これに自律走行システム(AHS)をどう組み合わせるかだ」

コベルコ建機社長・尾上善則氏「豪・米で売り上げ伸ばす」

コベルコ建機社長・尾上善則氏

―足元の状況と22年の見通しは。

「中国以外は需要は引き続き強い。悩みは半導体不足。半導体が入手できないため建機用エンジンが作れず、需要はあるのに販売台数を落としている状態だ。北米は特にしかり。中国も台数を落としている」

―北米は日野自動車問題でエンジンが供給できない状態に陥りましたが、他社製エンジンの建機への代替えは進んでいますか。

「現在は解決に手いっぱいの状況だが、22年はできる機種から順次更新していくことになるだろう。ここにも半導体問題が影を落としている。建機エンジンのコントロールユニットは特殊な半導体を使っており、ベトナムのコロナ禍で入荷できない状態。鋼材値上がりは建機の値上げで対応できるが、半導体不足は我々の力ではどうにもならない。解決は長引きそうだ」

―建機他社では生産余力が生じた中国工場の、輸出拠点としての活用が進んでいます。

「アームなどの製缶部品はもともと中国から輸出していた。中国が製缶部品の供給拠点になっている生産バランスは今後も変わらない。製品輸出もやっているが、客先で中国産に拒否感を示す人も多く、相手先は東南アジアや南米くらい。増やすのは容易ではない。完成車輸出で考えていたタイやインドネシアももともとは日本メーカーの牙城だったが、最近は中国の三一重工が単機能の低価格機でシェアを伸ばしている。サービスメンテナンスも日系代理店から人材引き抜きが始まっている。建機も日本製部品採用で品質が向上しており、侮れない」

―中国とアジアの状況が厳しいと、北米や豪州の増加がカギになりそうです。

「中国工場の生産能力は年1万台に対して20年は6000台、21年は見込みで5000台。22年も下がると見ている。豪州や米などは引き合いは好調だ。これらで売り上げを伸ばしたい。エンジン供給不足と半導体問題さえ解決すれば、計画数字は十分、射程内。売り上げで北米の比率は8%だが、さらに増やしたいと考えている」

―電動化と、IoT(モノのインターネット)への取り組みは。

「IoT関係では遠隔操縦のK―DIVE商品が22年から商用リリースされる。K―DIVEを今すぐやりたいという顧客も大勢いる。電動化やカーボンニュートラル対応の人材はいずれ増員したいが、北米のエンジン問題解決が先。これさえ片付けば、人材をそちらに振り向けられる」


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日刊工業新聞2022年1月4日

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