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「就活に有利になる」「強制的な風潮が嫌」。現役学生たちが語る“インターンシップの本音”

本当のインターンシップ #05

日刊工業新聞社は、8月26日から9月8日まで「2021年インターンシップ」を実施した。早稲田大、明治大、成蹊大、拓殖大、立命館アジア太平洋大学の2、3年生の7人が参加。約10日間、学生は記者体験のほか、書籍やイベントの企画、営業訪問など多様な職種の仕事を経験した。インターンシップを終えた学生たちが、今回の感想や現役学生だから言える“インターンシップの本音”について語り合った。(ナビゲーターは、デジタルメディア局長の明豊)

―みなさん、お疲れさまでした。10日間という短期でしたが、新聞社のインターンシップを体験してみて、どういう印象を持ちましたか?
(S・H)「私は、新聞社は記者だけで成り立っていると会社だと誤解していました。新聞社のインターンシップは職種別が多く、記者志望の私は他社でも記者職で応募していました。記者が一番のような雰囲気があったのですが、今回のインターンシップを経験してみて、新聞社には記者以外にも、広告営業や出版、イベントなどのさまざまな事業があり、全部の事業が大切なんだと学べました」

(K・E)「新聞のレイアウト(制作)に興味があって応募したのですが、実際に記者体験などをしてみて、新聞社には好奇心を駆り立てる仕事がたくさんあるんだ!と思いました。同行させていただくと、私は質問1個で終わってしまいます。ですが、記者や営業の方は、取材相手と言葉のキャッチボールを何度も交わすことで、相手の懐に入っていく様子がすごいと実感です!」

(A・S)「私はジャーナリストを目指し、記者職を志望していました。だけど、営業や出版の仕事に触れて、新しい道を見つけることができました。大学を卒業したら、記者になるんだ!と決めつけていましたが、マスコミには記者職しかないわけではなく、目の前がパーッと開けた感じがして選択肢が広がりました」

―そもそも、なぜインターンシップに参加したのですか?就職活動に有利になるかもという思いはありますか?
(E・O)「私は理科系のため、8割方が大学院を目指します。就職希望の人が少なく、自分で動かないと情報が入ってきません。研究者になろうと思って理科系学部に入学したのですが、周りはすごい頭の良い人ばかりで…。自分の特色ってなんだろう?って考えていくうちに、興味がある業界をのぞいてみようと思いました。ドキュメンタリー番組をよく観るのでメディアには関心がありました。今のマスコミの在り方に疑問をもったこともきっかけの一つです」

(A・M)「私は2年生です。何の情報収集もしないで3年生になってから動き出すと、冷静な判断ができるか不安です。早いうちに興味のある業界を知っておくことで、自信を持って自分の将来を方向付けたいと考えています。職場で働く社会人の方々が、どういう価値観で、どういうキャリアを積んできたのか興味がありました。インターンシップが就職活動に有利な材料になるという認識は、そうですね…残念ですが、すべての学生が持っていると思います」

(S・H)「インターンシップが有利に働くという思いは正直あります。というのは、2年生の時、数社にインターンシップを申し込みましたが、すべて参加できませんでした。会社側も3年生に参加してもらったほうが、選考上も効率が良いからかなと、うがった見方をしてしまいます。よく『選考には関係ない』と言いますが、すごいメモしてたり、『インターンシップは選考に関係するもんだと思って振舞った方がいいよ』と言われたりすることもありますしね」

(M・H)「時事ネタが好きなので、新聞社でのインターンを選びました。インターンシップが就職活動に影響しないと担当者の方はおっしゃりますが、言葉通りに解釈する学生はいないんじゃないかと思います。選考類似の面があること自体は否定しません。エントリー時に明確にしたほうがお互いのためになると思うのですが…今の制度設計では難しいのかもしれませんね」

―学生の本分は勉学との意見もあります。インターンショップは必要だと思いますか?
(A・H)「現場の仕事に触れられるという面では、学生にとって有用な手段のはずです。実際の仕事内容を体験できるインターンシップは必要だと思います。ただ、ふたを開けてみると、学生同士のグループワークがメーンになっていることもしばしばで…適性を見定められているのかなと考えてしまうこともあります。仕事体験が難しい職種があることは理解しています。ただ、インターンシップのそもそもの軸をぶらさずにお願いできればと思います」

(A・S)「私もインターンシップ制度自体は、職業を知ることができる機会となるので、あった方がいいと思います。ですが、参加が就職活動の優遇に結び付くのであれば、なくすべきです。というのも、地方大学の場合、大都市の企業が実施する対面型インターンシップに参加することが難しい場合もあります。参加の有無が就職活動の有利不利に影響するならば、地域格差が生じるインターンシップはやめるべきだと思います」

(K・E)「定期的に開催するインターンシップはなくてもいいと思っています。この会社に入りたいという熱意があれば自分で行動に出るはずですよね。そういう人の方が、入社後のミスマッチが少なくなると思います」

―現在のインターンシップをより良い制度にするために、大学や企業に求めることはありますか?

(A・M)「知り合いの学生に話を聞くと、『インターンシップが強制的になっている風潮が嫌だ』と言っていました。その人は、インターンシップの時期が留学の時期と重なっていて、どちらを選択すべきか悩んでいました。何を選択するかは個人の判断ですが、その選択で将来の可能性が狭められることに私は反対です。誰にとっても選択しやすい制度ができたら良いなと思っています」

(S・H)「大学の先生の中には、『平日に実施されるインターンシップに参加するのは学生の自由だが、授業は欠席扱いになる』と公言する人もいます。授業を休んでインターンシップに参加したことで単位を落として卒業できなかったら、結局就職もできなくなることだってあり得ます。一方で、仕事体験という意味からすれば、通常業務をしている平日にインターンシップを実施する必要があります。大学がキャリア教育を重視するなら、『インターンシップ参加による授業欠席は出席扱いとする』と規定するなどして、キャリア教育上の位置づけを明確にしてもらいたいです。平日に実施する必要性がある以上、大学側に歩み寄ってもらいたいと思います」

【まとめ】デジタルメディア局長・明豊「“妥協の産物”変化の途中」  現在のインターンシップ制度は、企業と大学の“妥協の産物”という面があるかもしれません。キャリア教育自体は、アルバイトを通じてもできるはずです。大学があえてキャリア教育を声高に叫ぶ必然性があるのかという気もします。ただ、変化を嫌う大学が変わりつつあることも事実です。今回のインターンシップを通じて、みなさんの視野が広がり、キャリア形成の一助になることができたなら幸いです。ありがとございました。

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本当のインターンシップ
インターンシップは学生が就職活動の一環として当たり前に参加するイベントになりました。足元ではコロナ下の最適なプログラムに多くの企業が頭を悩ませています。一方、大学側が期待する「キャリア教育の一環」という位置づけは形骸化しつつあります。インターンシップをめぐる動向を追いました。

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