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「価格上昇は避けられない」ドローンメーカー社長が語る半導体不足の影響

ACSL・鷲谷聡之社長インタビュー
「価格上昇は避けられない」ドローンメーカー社長が語る半導体不足の影響

鷲谷聡之社長

ACSLは国産飛行ロボット(ドローン)メーカーの代表的存在だ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などとともに安全性の高いドローンを開発、2022年に1000機の販売を目指している。米バイデン政権が中国DJIを投資禁止対象企業に選定するなど、世界各国で中国製ドローンへの警戒感や排除が広がる動きが追い風になる。一方、中国勢に代わって国内大手や欧米との競争が強まるとの懸念もつきまとう。鷲谷聡之社長に実情を聞いた。

―官公庁は予算事業のため22年にドローンを発売しても販売への貢献は翌年以降になるとの見方もある中、1000機の目標は達成できそうですか。

「十分達成できる。NEDOの事業で開発したため22年4月以降はもちろん、1―3月期も政府調達予算で確保されており、民間も含めすでに600機の注文をいただいている。残る400機も電力や通信会社向けなどでめどは付いている」

―半導体不足の影響は。

「600機分は先行手配で確保したが、後の機体はあれこれ手は打っているものの価格上昇が避けられない。半導体は特殊な製品が多いため500円のものが3万円になるなど、むちゃくちゃな値上がりだ。汎用半導体などで代替しようにも、機体の設計変更から性能試験などで半年弱はかかる。その時点で品薄だった半導体が平準化することもありうるし、代替した半導体が逆に供給不足になる可能性もある。頭の痛い問題だ」

―ドローンユーザーの一部には中国製の方が安くて使いやすいとの声もあります。国内でもソニーなどが100万円クラスの低価格ドローンを発売しました。こうした動きをどう見ていますか。

「中国製ドローンが安価で良いとのユーザーもいるが、ごく一部の少数機ユーザーだ。電力会社や通信会社など大手になるほど、安全保障の重要性は良く理解していただいている。今後もこの流れは変わらない。ソニーの機種についてはジャンルが違うため競合はしないと考えている。自動車やカメラ大手が量産性を武器に参入するとの観測もあるが、セキュリティー対応はいろいろな認証や政府との関係があるため、おいそれと参入は難しい。ニッチ市場なので費用対効果の面で参入してくるかという問題もある」

―官公庁関連で1000機を販売できても、その先は。

「24年までは十分、達成可能だ。22―24年で合計3000機、そうなれば今度は部品やメンテナンスなど新たな市場が生まれる。ドローン更新期間は一般に3年で、この売り上げも見込める。機種は当面、政府向けと可搬重量数キログラムと5キログラム、下水道管路向けの4種に絞り、量産効果を追求していく」

【記者の目/利益稼ぐ新たなモデル必要】
中国の低価格電気自動車(EV)のように本体価格を安く設定し、交換電池やパーツで稼ぐ方法はどうかの問いに「有力な選択肢だと思う」と明確に答えた。ドローンが普及するほど価格は下がり、利益を稼ぐ新たなビジネスモデルが必要になる。鷲谷社長はすでにその点も見据えているようだ。(編集委員・嶋田歩)
日刊工業新聞2021年12月27日

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