ニュースイッチ

コロナ「第6波」にどう備える?病床整備に必要な二つのカギ

今夏、新型コロナウイルス感染拡大の第5波で、自宅療養中に亡くなる患者が相次いだ。政府が自宅療養を基本とする方針を打ち出し、自宅療養者数は全国で13万人を超えた。本来であれば入院をして治療を受けるべき患者でも、病院の受け入れ体制の関係から必要な医療を受けることができない事態となった。これを教訓に政府は11月、第6波に備えた総合対策を策定。コロナ病床を用意し使用率を8割まで高める。実行できるかは病床の稼働状況の見える化、医療人材の確保がカギになりそうだ。

「大災害に匹敵する状況になっている」。8月末、東京都医師会の尾崎治夫会長は会見で第5波の医療状況をこう表現した。同月、東京では1日の新規感染者数が5000人を超える日が続き、自宅療養者数は最大2万人程度まで増加。だが新型コロナに感染しても入院できる人は一時10%程度にとどまった。

これらを教訓に政府は第6波に備えた医療提供体制の強化策を打ち出した。全国でコロナ病床を3割程度増やし、約3万7000人を受け入れる体制を構築する。

第5波の際はすぐに受け入れ可能と申告しながらも、ほとんど患者を受け入れない病院の問題が顕在化した。そのため政府は、医療機関にコロナ患者の受け入れ状況を国のシステムに入力してもらい、コロナ病床の使用状況などを医療機関ごとに毎月公表して見える化する。

総合対策には医療人材の数値目標などは盛り込まれず、運用は自治体に委ねられている。病床を稼働できるかは人材の確保にかかっているが、東京都の担当者は「(感染流行時に)コロナ対応をするスタッフの確保に病院も苦慮している」と話す。そこで都では人材を確保するための取り組みの一つとして「東京都医療人材登録データベース」を開始。感染拡大時に登録している医師や看護師を派遣できるようにする。第6波に備え、病床確保、使用率の向上に向けた取り組みが国、自治体、病院に引き続き求められる。

日刊工業新聞2021年12月23日

編集部のおすすめ