1万2000本売れた「卵を溶くだけの調理器具」、生かされた精密板金加工会社の独自技術
トネ製作所(東京都荒川区)の“卵を溶く”ことに特化した調理器具「ときここち」が好評だ。消費税込みの価格は4290円とやや高価だが、2019年の発売から21年12月現在までにおよそ1万2000本を売り上げている。白身を先端のリングで捉えて断ち切ることで、白身が残らない溶き卵ができる。介護や化粧品材料の分野など、調理以外の用途にも活用できるとして注目されている。
トネ製作所は創業60年の精密板金加工会社。レーザー加工で一体成形したステンレス板を独自技術でひとつずつ手作業で仕上げ、ときここちを作る。混ぜる行為と相性がよく、介護における服薬の補助や、化粧品材料の製造でも活用が期待される。業務用の大型サイズの受注生産も受け付けており、飲食店で使用されている。
トネ製作所の利根通社長は「ときここちは大量生産ができない形状。創業から積み重ねてきた技術で世の中のお役に立ちたい」と笑顔を見せる。
日刊工業新聞2021年12月20日