【ディープテックを追え】糖尿病患者の血糖管理の課題解決。その手法は?

#43 Provigate

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血糖値の上昇を抑えるインスリンが働かなくなる糖尿病。患者はインスリンの注射に加え、日頃の食生活や運動による体質改善は欠かせない。

だが、多くの患者が「健康的な生活」を続けるモチベーションを維持することは難しい。その原因は最新のデータかつ、定期的な血糖モニタリングが難しい点だ。

Provigate(プロヴィゲート、東京都文京区)は簡易なモニタリングで、この課題の解決を目指す。

2つの指標、「HbA1c」と「GA」

現在糖尿病のモニタリングに広く使われるのは血液中のグリコヘモグロビン(HbA1c)だ。赤血球内のたんぱく質であるヘモグロビンが血液中のブドウ糖とくっつくことで、HbA1cへ変化する。HbA1cは空腹時など血糖値を測るタイミングによる変化を受けにくい。そのため、平均的な血糖の状態を把握することに使われる。

問題となるのはHbA1cの寿命がおよそ120日と長いこと。このデータを指標にすると「1カ月から3カ月の平均血糖値」を使い、患者の健康指導をすることになる。

例えば、患者が運動や健康的な食事を検査の直近2週間行っても数字には表れないなどが挙げられる。

同社は指先などから数マイクロリットルの血液を採取し、グリコアルブミン(GA)という物質を解析し、モニタリング指標にする。アルブミンは血管内に水分を保持する役割をもつ血漿(けっしょう)たんぱく質。GAはアルブミンと血液中のブドウ糖がくっついたもの。半減期がおよそ17日と短く、比較的直近の様子を観察できる。同社は小型のカードリッジで血液を採取し、計測器でGAを読み取る。簡単にモニタリングを実現する。

同社が開発する検査デバイス

介入効果をいかす

プロヴィゲートの関水康伸最高経営責任者(CEO)は「体重も酸素飽和度も素早く測れる時代なのに、血糖値では難しい。この状況をGAのバイオマーカーを使って変えていきたい」と意気込む。

同社はGAを血糖値のモニタリング指標にすることで患者の行動変容を促す計画だ。根拠になるのが、東京大学医学部附属病院と陣内会陣内病院と共同で行った臨床研究の結果だ。

糖尿病患者、約60名をGA値を開示する群としない群に分ける。すると、GA値の結果を開示した群は、結果を開示していない群によりもGAや体重などの数値が改善した。関水CEOは「GAにはかなりの介入効果がある」と話す。血糖自己測定(SMBG)など患者自身が採決する指標もあるが、高価格や平均血糖が把握しづらい問題があった。同社はGAの特徴である直近の平均血糖が分かる点を活かし、センサーと患者に結果などを通知するアプリを組み合わせる。患者の行動変容を促し、糖尿病の改善につなげる。まずは、病院や薬局向けのデバイスを開発する。

関水CEO

とはいえ、同社も初めからGAに注目していた訳ではない。当初は涙のグルコースから血糖値を推定する構想だった。同時期には米グーグルもコンタクトレンズでグルコースの測定を目指していた。涙のグルコースで目指したのはリアルタイムで血糖値を推定し、インスリン注射のタイミングを見極めたり、患者の行動変容を促すこと。インスリン注射の場合、正確なデータで無ければ命に関わる。涙のグルコース測定は技術的な課題があり「患者の行動変容」にターゲットを絞り込み、GAの測定に切り替えた。関水CEOは「糖尿病患者にとって本当に効果があるものを出すための決断だった」と当時を振り返る。

今後は量産製品の性能を高め、薬事承認を目指す。将来的には家庭用デバイスや涙、唾液のGAを測定することも視野に入れる。

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COMMENT

小林健人
デジタルメディア局DX編集部
記者

検査のたびに採血するのは意外と苦痛です。慢性的な疾患の場合、定期的なモニタリングは欠かせないためこの負担感は大きいものになります。採血の技量が無くともできるのであれば、在宅診療の効果も高まるのではないでしょうか。

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