自動車分野で大注目の「セルロースナノファイバー強化樹脂」、宇部興産が事業化へ改良急ぐ
宇部興産は、セルロースナノファイバー(CNF)強化ナイロンの事業化に向け製品改良を急ぐ。これまでに京都大学や日本製紙が進めてきたCNF強化樹脂開発の取り組みに参画し、汎用的な製造装置を用いてCNF強化樹脂を量産する技術を確立した。今後、樹脂へのCNFの分散性向上によりコスト改善と機能性向上を推進。2027年度頃の事業化を目指す。
CNF強化樹脂は、自動車分野などでサステナブルな(持続可能な)材料へのニーズの高まりを受け、注目が集まっている。ガラス繊維よりも少量の添加で高い機能を発揮できることに加え、軽量化が強み。ただ、高いコストや天然素材ゆえのバラつきが課題となっていた。
そこで、宇部興産はCNFの分散性向上により課題の解決を図る。「混練条件や添加剤の工夫で分散性を高めれば少量の添加で高い機能を発揮できる」(担当者)。添加量の低減はコスト低減に効く。樹脂中にCNFの小さな塊(だま)ができると、その部分から破壊が起きるため、これを防ぐためでもある。
同社は日本製紙とともに、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の助成プロジェクトで研究を進めている。同プロの期間は24年度まで。その後3年後をめどに量産体制の構築を図る。
CNFの添加量は用途や要求性能によって異なり、基本的に10―15%を想定する。自動車のエンジンカバーやドアハンドルなどへの採用を目指す。
日刊工業新聞2021年12月14日